ビレーの薄明かりが、まだ眠りの中にいる街に静かに差し込む頃、ラーンはイシェの肩を叩いた。「起きろ、寝坊するぞ。今日はテルヘルが珍しい依頼を持ってきたんだって」。イシェは眠そうに目をこすりながら、「また遺跡か…」と呟いた。
テルヘルは、いつも通り影のある表情で二人に話しかけた。「今回はヴォルダンとの国境に近い遺跡だ。危険だが、報酬も格別だ。古代の技術が詰まった遺物が見つかる可能性があるという」。ラーンの目は輝き、イシェは少しだけ眉をひそめた。
遺跡の入り口は、まるで獣の口のように大きく開いていた。内部は薄暗く、湿った空気が漂う。ラーンは剣を構え、イシェは細長い杖を手に、テルヘルが先導するように進んでいく。遺跡の奥深くで、彼らは美しい水晶の柱を発見した。柱からは、青白く淡い光が放たれ、まるで氷の彫刻のように美しく輝いていた。
「これは…」イシェは息をのんだ。「古代ヴォルダン文明の記録によると、この水晶には強力な魔力が宿っているという」。テルヘルは水晶を手に取り、目を細めた。「この力を手に入れれば、ヴォルダンに復讐できるかもしれない…」と呟いた。ラーンは、テルヘルの瞳に燃える炎を感じた。
しかし、水晶に触れた瞬間、遺跡の奥から不気味な音が響き渡った。壁が震え、影が激しく踊る中、巨大な石像が現れた。その目は赤く光り、鋭い牙を剥いていた。ラーンは剣を抜き、イシェは杖を振るい、テルヘルは水晶を握りしめながら戦いの準備をする。三人は互いに力を合わせ、石像に立ち向かう。
激しい戦いが繰り広げられ、遺跡は轟音と光で満たされた。ラーンの剣は石像の硬い皮膚を切り裂き、イシェの杖から放たれた魔法が石像を打ち砕く。テルヘルは水晶の力で石像を操り、仲間と共に戦った。
ついに石像は倒れ、遺跡に静寂が戻った。疲れた三人は、互いに顔を見合わせた。水晶は無事だった。ラーンは、イシェに目を向けると、「また大穴が見つかったぞ!」と笑顔で言った。イシェは、ラーンの無邪気な笑顔を見て、わずかに唇を動かした。
テルヘルは水晶を手に取り、深く息を吸った。復讐への思いは消えていなかったが、この戦いで何かが変わっていたように感じた。水晶の光が、彼女の心を照らし出すかのように。