ラーンが、興奮気味に遺跡の入り口を指さした。
「おいイシェ、見てみろ！今回は絶対何かあるぞ！」
イシェは、ラーンの背後から彼の手を掴んで引っ張った。「待てよ、ラーン。落ち着いて調査しないと危険だぞ。あの入口には奇妙な紋様があるし…」
「紋様？そんなのどうでもいいんだよ！早く中に入りたいんだ！」
ラーンの目の輝きは、まるで宝石のように煌めいていた。イシェは彼の様子を見てため息をついた。ラーンの夢は、この遺跡に眠るという莫大な財宝を手に入れ、ビレーから出て豪邸に住むことだった。だが、イシェはそんな夢が実現するとは思えなかった。
「よし、わかった。でも約束したよな？今回は俺の言うことを聞くんだぞ」
イシェは仕方なく頷き、ラーンの後ろをついて遺跡の中へ入った。
テルヘルは、二人の様子をじっと見つめていた。彼女は、この遺跡探検に隠された真の目的を知っていた。それは、ヴォルダンが秘かに所有する強力な遺物「アークライト」の在り処を突き止めることだった。アークライトを手に入れれば、ヴォルダンの野望を阻止し、自分の人生を取り戻せる。
彼女にとって、ラーンとイシェは単なる道具に過ぎなかった。しかし、彼らの情熱的な姿を見る度に、テルヘル自身もかつて抱いていた夢を思い出していた。それは、ヴォルダンへの復讐を果たし、真の自由を手にすることだった。
遺跡内部は、薄暗い光で照らされ、不気味な静けさに包まれていた。壁には、奇妙な絵画が描かれており、ラーンとイシェはそれらを興味津々に眺めていた。
「見てみろ、イシェ！こんなすごい絵があるぞ！」
ラーンの指さす先には、幾何学模様で構成された複雑な図形が描かれていた。イシェは、その図形に何か特別な意味を感じた。まるで、古代の文明のメッセージのように…。
「ラーン、あの図形…もしかして…」
イシェの言葉は、ラーンの興奮を鎮めることはできなかった。彼は、すでに次の部屋へと進んでいく。テルヘルは、彼らの背後からゆっくりと足音立てて近づき、壁に描かれた絵画に目を凝らした。
「アークライト…」
彼女は心の中で呟いた。その名前には、ヴォルダンに対する憎悪と、そして、失われた自由への渇望が込められていた。