ラーンの豪快な笑いがビレーの朝の喧騒に溶け込んでいく。イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら、彼の背中に手を置いていた。
「本当にこれでいいんだろ?あの遺跡は危険だって聞いたぞ」
「大丈夫だ、大丈夫!俺が先陣きって、危険な罠をすべて処理してやるからな!ほら、テルヘルさんも言うだろ?」
ラーンの視線がテルヘルに向かうと、彼女は薄暗い顔で頷いた。
「準備は万端です。ただし、遺跡内部の情報は不十分です。慎重に進みましょう」
ビレーを出た一行は、山道に続く道を進む。太陽が燦々と照りつける中、イシェはラーンの背中に密かに耳打ちした。
「テルヘルさんの目的って一体何なんだろう?あの目は何かを隠している気がするんだ」
ラーンは振り返らず、豪快な声で答えた。
「どうでもいいだろ!大穴を掘り当てるのが先だ!それに、テルヘルさんは強いから頼りになるだろう」
イシェは納得のいかない表情だったが、何も言わずに歩き続けた。
遺跡の入り口には、奇妙なシンボルが刻まれた巨大な石門があった。テルヘルが慎重に石門を開け、一行は遺跡へと足を踏み入れた。
薄暗い通路を進むと、壁には不気味な絵画が描かれていた。イシェは背筋が寒くなるのを抑えきれなかった。
「ここって本当に安全なのか…」
ラーンは気にせず、剣を構えて先へ進んだ。テルヘルは彼をじっと見つめ、何かを囁いたように口を開いた。
「注意深く見なさい。この遺跡には多くの秘密が眠っている」
その言葉が響き渡る直後、突然、床に仕掛けられたトラップが発動した。ラーンは素早く身をかわし、イシェを引っ張って難を逃れたが、テルヘルは罠にかかり転倒した。
「テルヘルさん!」
ラーンの叫び声が響き渡り、遺跡の奥から不気味な笑い声が聞こえてきた。
イシェはラーンに耳打ちした。
「これは罠だ!誰か、この遺跡を待ち受けている!」