「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂によると奥にある部屋には未開の遺跡があるらしいぞ」ラーンの目の輝きは、まるで宝石を見つけた子供のようだった。イシェは眉間に皺を寄せた。「また聞いた話だけで決めるんじゃないわよ。あの塔は危険だって聞いたことがある」
「大丈夫、大丈夫。イシェが心配する必要はないんだ。俺たちが一緒ならなんとかなるさ」ラーンは胸を叩き、豪快に笑った。イシェはため息をつきながら、テルヘルの方を見た。「どう思う?」
テルヘルは冷静な視線で塔を見つめていた。「危険であることは確かだ。しかし、その危険と引き換えに貴重な情報が得られる可能性もある。我々にとって必要なものだ」彼女は剣を軽く握りしめ、決意を固めた。「準備をしよう。日没前に塔に入るぞ」
崩れ落ちた石畳の上を慎重に進む3人。ラーンの軽快な足取りとは対照的に、イシェは常に周囲を警戒していた。テルヘルは後ろから二人を見守りながら、静かに呪文を唱えた。彼女の体には薄っすらと光が流れ、周囲の空気をわずかに歪ませているように見えた。
「これは…?」ラーンが声を上げた。「この塔、何か変だぞ」
壁一面に広がる奇妙な模様が、まるで生きているかのように脈打っている。イシェは背筋が寒くなるのを感じた。「何だろう…あの模様は…」
その時、塔の奥から不気味な音が響き渡った。石のゴロゴロという音と共に、何か巨大なものが動き出したようだ。ラーンは剣を構え、イシェも小刀を握りしめた。テルヘルは冷静に状況を判断し、「あれは…魔獣だ。しかも、強い耐性を持つ魔獣だ」と呟いた。「準備しろ、戦うぞ!」
魔獣の咆哮が塔中に響き渡る。3人は互いに協力し、魔獣の猛攻を受け止めた。ラーンの力強い剣撃、イシェの機敏な動き、テルヘルの戦略的な魔法攻撃。しかし、魔獣は強力な耐性を持つため、なかなか倒すことができない。
戦況が不利になる中、イシェが突然叫んだ。「あの模様…!」
彼女は塔の壁に描かれた模様に気づいたのだ。その模様は複雑な図形を成しており、魔獣の動きと対応しているように見えた。イシェは急いでその模様を記憶し、ラーンとテルヘルに伝え始めた。
「あの模様を攻撃すれば、魔獣の耐性を弱めることができるはず!」
3人は協力して模様を狙い、攻撃を繰り返した。ついに、魔獣の耐性が崩れ始め、徐々に弱っていくのが見えた。そして、最終的な一撃で魔獣は倒れた。
息絶え絶えに立ち上がる3人。イシェは胸を撫で下ろしながら、「あの模様…あの模様のおかげで勝てたんだね…」と呟いた。
テルヘルは深く頷き、「その通りだ。あの遺跡には、まだ解明されていない多くの秘密が隠されているかもしれない」と静かに言った。ラーンの顔に再び輝きを取り戻し、「よし!次はあの遺跡に潜ってみようぜ!」と叫んだ。イシェは苦笑いしながら、彼を追いかけるように塔を後にした。