ラーンが錆びた剣を磨きながら、「なあイシェ、今日はどれだけの遺物が見つかるかな？」と尋ねた。イシェは、彼の肩越しに見える遺跡の入り口を見つめ、「そんなことよりも、あの巨大な石板に刻まれた文字の意味が解読できればいいのに」と答えた。ラーンの楽観的な性格とは対照的に、イシェは常に慎重で、遺跡探検という危険な仕事にどこか諦めの感情を抱いていた。
テルヘルは二人を見下ろすように、「無駄な議論だ。重要なのは成果だ。今日見つけた遺物があれば、次の調査資金を確保できるだろう」と冷たく言った。彼女の目は鋭く、まるで獲物を狙う獣のように鋭かった。ヴォルダンとの復讐心は、彼女を常に冷酷にさせていた。
ビレーの遺跡は、かつて栄華を誇った文明の痕跡を留めていたが、今は朽ち果て、老朽化していた。石造りの壁には苔が生い茂り、崩れ落ちた柱からは風化した石塵が舞い上がり、まるで時が止まったかのような静寂が広がっていた。
ラーンは、イシェの慎重さを無視して、遺跡の中へと駆け込んでいった。「よし！今回は大穴だ！」と叫んだ。しかし、その瞬間、床の一部が崩れ落ち、ラーンは深い闇に飲み込まれてしまった。
イシェは慌ててラーンの手を掴もうとしたが、間に合わなかった。「ラーン！」と叫び声を上げた。テルヘルも冷静さを失わず、ロープを投げ下ろした。しかし、ラーンの姿は見えない。闇の中に消えてしまったのだ。
イシェは恐怖を感じながらも、ラーンを助けようと、暗闇に続く階段へと足を踏み入れた。その時、彼女は古い石板の隙間から、かすかに光る文字を見つけた。それは、かつてこの遺跡に住んでいた人々の言葉だった。そして、その内容を解読すると、イシェは衝撃的な事実を知ることになる。
「この遺跡は、老化を防ぐ秘薬を製造するための施設だった…」
イシェは、ラーンの安否を心配しながらも、その秘密を胸に秘めて、闇の奥へと進まなければならなかった。