ラーンが遺跡の入り口で石を蹴飛ばす。イシェが眉間に皺を寄せながら地図を広げた。「今回は本当に大穴が見つかるんじゃないか?」とラーンの言葉に、イシェは小さくため息をついた。「またそんなことを…」
テルヘルは背後から低い声で言った。「準備はいいな?」
ラーンとイシェは相視し、頷いた。
遺跡の中は薄暗く、湿った空気が立ち込めていて、古びた石造りの通路が続くだけだ。足元には石畳の隙間から草が生え茂り、時折、不気味に音が鳴る。ラーンの背筋がゾッとする。
「何かいるぞ…」とラーンが剣を抜き出すと、イシェも短剣を構えた。「静かに」テルヘルが警告するように言った。
進むにつれて、壁には奇妙な文様が刻まれていて、時折、崩れかけの石像が現れる。イシェは地図を確認しながら慎重に進んでいく。ラーンの足音だけが響く静寂の中、突然、遠くからかすかな声が聞こえてきた。
「あれは…」イシェが耳を澄ますと、声は次第に近づく。まるで老人がつぶやくような声だ。「何かいるぞ」とラーンが警戒する。
視界が開けた先には、崩れかけた石室があった。その奥には、老人が一人座っているように見えた。老人は背を向けており、何やら呟いている。
「あの老人が…」イシェが言いかける前に、テルヘルが手を上げた。「待て」。彼女はゆっくりと石室に近づき、老人に声をかけた。「あなたは誰ですか?」
老人はゆっくりと振り返り、白濁した瞳で三人を見つめた。その目はどこか虚ろで、まるで死んだように見えた。
「ここは…」老人の声はかすれていて、聞き取りづらかった。「ここは禁じられた場所だ…」。