「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂では奥深くには未曾有の宝が眠っているらしい」
ラーンは目を輝かせながら地図を指さした。イシェは眉間に皺を寄せ、地図をもう一度確認する。
「あの塔は危険だって聞いたことがあるわよ。何年も前に探索隊が行方不明になったって話も…」
「大丈夫大丈夫!俺が先頭に立って道を切り開くから」
ラーンの豪快な笑いはイシェの懸念をさらに深めるだけだった。テルヘルは冷静に状況を判断する。ラーンとイシェの力を利用できるのは確かだが、彼らの予測不能な行動には常に注意が必要だ。特にラーンは、彼女の目的達成のための駒として利用するにはあまりにも自由奔放すぎる。
崩れた塔への道は険しく、落とし穴や仕掛けが待ち受けていた。ラーンは軽々と罠をかわしながら先へ進むが、イシェは慎重に足場を確認しながら続く。テルヘルは二人が互いに助け合う姿を見て、複雑な感情を抱く。彼らの絆は彼女の計画にとっては邪魔なものになりかねない。
塔の奥深くで、彼らは巨大な石棺を発見する。ラーンの興奮を抑えきれない様子にイシェが苦笑いした。
「本当に宝が眠っているのかしら…」
しかし、石棺を開けた途端、部屋中に毒ガスが充満した。ラーンは咄嗟にイシェを庇い、自ら毒ガスに巻き込まれる。
「ラーーン!」
イシェの悲鳴が響く中、テルヘルは冷静さを保った。彼女は事前に用意していた解毒薬をイシェに渡しながら、状況を分析する。ラーンの行動は予測不能だったが、その犠牲によって貴重な情報を手に入れた。
「この毒ガスはヴォルダンが開発した兵器だ…まさかこんな場所に…」
テルヘルは真実を悟り、胸を痛めた。ヴォルダンとの戦いは想像以上に困難なものになるだろう。しかし、ラーンの犠牲を無駄にしないためにも、彼女は目的を果たさなければならない。
イシェの手を握り締めながら、テルヘルは決意を新たにした。
「生き延びて、必ず復讐を果たすわ…」