ビレーの朝はいつも早かった。ラーンが目を覚ますと、イシェがすでに朝食の準備をしていた。二人は小さなアパートの一室を共有し、互いに頼り合っていた。イシェは静かに目玉焼きを焼いており、ラーンのために少し多めに肉を煎じていた。
「今日はどこに行くんだ?」イシェが尋ねると、ラーンは眠そうにテーブルに腰掛けた。
「テルヘルが新しい遺跡の情報を持ってきたらしいぞ。ヴォルダンに近い場所だって言う」
イシェは眉間に皺を寄せた。「また危険な場所か…」
ラーンの肩越しに見慣れた風景が広がっていた。ビレーの街並みは、山と平野の境界に位置し、小さく見えた遺跡群に向かって伸びていた。彼らにとって、この街は生まれ育った場所であり、同時に、いつまでも抜け出せない檻のようなものだった。
「いいだろう、行こう」イシェは諦めたように言った。習慣で決まったように、ラーンが先に外へ出て、イシェが後を追う。
テルヘルが待っている場所は、いつも通りの荒れた酒場だった。彼女はカウンターに腰掛け、一杯の酒を片手に待っていた。ラーンの顔を見た瞬間、かすかに微笑みを浮かべた。
「準備はいいか?」
ラーンとイシェは頷き、テルヘルと共に遺跡へと向かった。道中、ラーンの無邪気な笑い声とイシェの冷静な指示が交錯した。彼らは習慣で互いの存在を補い合いながら、危険な道を歩んでいた。
遺跡への入り口は崩れかけ、薄暗い石畳が続く階段だった。テルヘルが先導し、ラーンとイシェは後ろから続いた。彼らは互いに言葉を交わさず、それぞれが過去の経験から生まれた習慣に従って行動していた。
「ここだ」
テルヘルが言った。遺跡の奥深くで、薄暗い光が揺らいでいた。そこには、かつて誰かが残した秘密が眠っているはずだった。ラーンはワクワクした表情を見せ、イシェは警戒心を強めた。そして、彼らは習慣に従い、未知なる世界へと足を踏み入れた。