ラーンが巨大な石扉の前で足を止めた。「ここだな。」と彼は言った。イシェは眉間に皺を寄せながら扉の表面を撫でた。「何か感じるわね…」と呟いた。
テルヘルは後ろから彼らをじっと見つめていた。「時間がない。開けろ。」
ラーンの表情が曇った。「イシェ、あの記号…見覚えがあるか?」イシェは頷き、「私の義父がかつて研究していた遺跡の記録に…」。彼女の言葉はそこで止まった。義父が亡くなってから数年。その研究は未完成のままだった。
「どうだ、開けるのか?」テルヘルの声が冷たかった。ラーンは深呼吸をして扉に手を伸ばした。その時、背後から激しい風が吹き荒れた。三人はバランスを崩し、転げ落ちた。振り返ると、扉が轟音を立てて開き始めた。
扉の奥からは不気味な光が漏れていた。イシェは恐怖で言葉を失い、ラーンは剣を握り締めた。「行くぞ!」テルヘルが先導するように奥へと駆け込んだ。
深い闇の中を進み、やがて広大な地下空間に出た。そこには、輝く結晶が散乱し、中央には巨大な祭壇がそびえ立っていた。祭壇の上には、脈打つような光を放つ球体があった。
「これが…!」イシェの目を見開いた。「義父の研究対象だったもの…」ラーンは目を輝かせ、「大穴か…!」と叫んだ。テルヘルは静かに剣を抜いた。「目的はこれだ。」
その時、祭壇から黒い影が立ち上がり、三人に襲いかかった。ラーンの剣が光り、イシェの矢が飛ぶ。激しい戦いが始まった。しかし、影は強すぎた。ラーンが倒れ、イシェも傷を負った。テルヘルは絶望的な表情で、最後の力を振り絞って球体を手にした。
その時、イシェは何かを思い出した。「義父が言ってた…この球体は…」彼女は必死に叫んだ。「触れない!危険だ!」
しかし、遅かった。テルヘルは球体を握り締めた瞬間、強烈な光に包まれた。影は消滅し、三人は倒れ込んだ。
意識を取り戻すと、イシェはラーンの顔を見ていた。彼は目を閉じ、血を流していた。「ラーン…」彼女は叫んだ。
その時、ラーンの胸がかすかに動いた。そして、彼は目を覚ました。「イシェ…?」
テルヘルは立ち上がると、球体を見つめた。球体は消滅し、代わりに小さな水晶が残っていた。
「これは…?」イシェが声をかけた。テルヘルは水晶を手に取り、静かに言った。「義父の研究は間違っていなかった。そして…」彼女はラーンとイシェに目を向け、「この水晶は、我々に新たな道を開く鍵となるだろう。」