「おいラーン、今日はあの崩れかけの塔はどうだ?噂によると奥に秘宝が隠されているらしいぞ」
イシェの言葉にラーンは目を輝かせた。「よし!それなら大穴が見つかるかもな!イシェも準備はいいか?」
イシェは小さくため息をつきながら頷いた。いつも通り、ラーンの計画性のない行動に巻き込まれることになるのだ。
「待て」
そこへテルヘルが割り込んだ。「今日の探索は中止だ。情報を得た。ヴォルダンの監視が強化されている。我々が動き出すとすぐに察知されるだろう」
ラーンの顔色が曇った。「またかよ。いつになったら俺たちの大穴が見つかるんだ!」
「落ち着け、ラーン」テルヘルは冷たく言った。「今は忍耐だ。準備を続けろ。ヴォルダンに復讐を果たすためにも、そしてお前たちの夢を実現させるためにも」
イシェはテルヘルの言葉に少しだけ安心した。彼女はいつも冷静で、何か計画を持っているように見えた。ラーンが言うように、テルヘルは単なる雇い主ではない。何か別の目的を抱えているのだ。
「よし、わかった」ラーンは渋々頷いた。「じゃあ今日は街で酒を飲むか?イシェの奢りだぞ!」
イシェは苦笑した。「またそんなこと言わないでよ…」
三人はビレーの喧騒の中へと消えていった。夕暮れのオレンジ色の光が、彼らの背中に長い影を落とす。その影の中には、知られざる秘密と、それぞれの欲望が渦巻いていた。
翌日、イシェは街中で一人の老人に遭遇した。それはラーンの義父であり、かつて共に遺跡探索をしていたという男だった。老人はイシェに、ラーンの過去とテルヘルとのつながりについて語った。
「ラーンは、あの日ヴォルダンからの襲撃で両親を失ったのだ。そしてテルヘルはその襲撃を生き延びた唯一の人物だった。彼女はラーンを救い、彼と共にヴォルダンへの復讐を誓ったのだ」
イシェは衝撃を受けた。ラーンの無邪気な笑顔の裏に隠された深い悲しみを知り、そしてテルヘルの復讐心とラーンへの深い愛情を理解した。
イシェは決意した。ラーンとテルヘルを支え、彼らの夢を実現させるために、自分ができることをする。そして、いつか、真実にたどり着くために…。