ラーンの粗雑な剣の扱いにイシェは眉をひそめた。「もっと丁寧に扱わないと、大切な遺物が傷つくぞ」
「気にすんなって、イシェ。こんなボロい遺跡で何が出ると思ってんだよ」ラーンはそう言いながら、石化した壁に剣をぶつけた。埃が舞う中、かすかな光が反射した。
「あれ?」イシェは目を輝かせ、近づいていく。「もしかしたら…」
すると、その瞬間、壁の一部が崩れ落ちた。背後から「やれやれ」と声が聞こえた。テルヘルだ。「この遺跡の地図は正確だったみたいだな」彼女は満足そうに言った。
崩れた壁の奥には、小さな祭壇があった。そこに置かれていたのは、輝く金色の杯だった。ラーンが興奮気味に手を伸ばそうとした時、イシェが彼を制止した。「待て、ラーン。あの杯には何か刻まれているぞ」
杯をよく見ると、複雑な模様が彫られていた。イシェは言葉を失った。「これは…ヴォルダン王家の紋章じゃないか…」
テルヘルは目を細めた。「まさか…」
その時、遠くで何者かの足音が聞こえた。ラーンは剣を構えた。「誰か来たぞ!」
影が遺跡に忍び寄る。彼らは数人の武装した兵士だった。リーダーは、鋭い眼光で三人を見下ろした。
「ヴォルダン軍か…」イシェが呟いた。
リーダーはにやりと笑った。「いいものが見つかったようだ」
ラーンは剣を振るい、イシェも杖を構えた。テルヘルは冷静に状況を判断した。「彼らを倒すのは簡単ではない。ここは逃げよう」
その時、杯に刻まれた紋章が光り始めた。杯が突然空中に浮かび上がり、激しい光を放った。
ラーンの義兄がヴォルダン軍の兵士と戦いながら、イシェとテルヘルを遺跡から脱出させた。彼は、かつてヴォルダン王家に仕えていたが、テルヘルの復讐を手伝うために家族を捨てて彼女と共に戦っていたのだ。