「よし、ここだ！」ラーンが声を張り上げ、岩壁を指さした。イシェは眉間に皺を寄せながら、地図を広げた。「確かに、遺跡の入り口と一致する場所だが…あの洞窟は、以前から噂があったぞ。危険な群れが住んでいると言われている」
「そんなの気にすんな！大穴が見つかれば、どんな危険も乗り越えられる！」ラーンの瞳は輝いていた。イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けた。「どうするんですか？」
テルヘルは静かに洞窟を見つめていた。その目は、まるで洞窟の奥底にある何かを穿ち抜くかのようだった。「リスクを避けるのは賢い選択だ。だが、我々の目的を達成するためには、この遺跡の探査は避けられない」彼女は剣に手をかけた。「準備はいいか？」
ラーンは軽快に頷き、イシェも渋々ながら同意した。三人は慎重に洞窟へと足を踏み入れた。暗闇の中、不気味な音がこだまする。壁には、何かの獣の爪痕が深く刻まれていた。
「何かがいる…」イシェの声は震えていた。ラーンの手元には剣がしっかりと握られていた。テルヘルは周囲を警戒しながら、ゆっくりと歩を進めた。
突然、洞窟の奥から、不規則な足音が聞こえてきた。その音は、まるで複数の獣が重なって走り回るような、不気味で狂った音だった。ラーンは緊張した表情で剣を構え、イシェは小さく悲鳴を上げた。
「群れだ…」テルヘルは低く呟いた。視界の端で、黒い影が蠢いているのが見えた。それは、まるで闇そのものから這い上がってきたかのような、不気味な姿をした獣たちの群れだった。
ラーンとイシェは恐怖に震えながら、後ろに下がろうとした。しかし、群れはすでに彼らを取り囲んでいた。逃げる道は絶たれていた。
テルヘルは冷静さを保ち、剣を抜き放った。「行くぞ！」彼女は鋭い眼光で群れに挑みかかった。ラーンとイシェも、テルヘルの後ろから、必死に抵抗した。
激しい戦いが始まった。洞窟内は、獣の咆哮と剣同士がぶつかり合う音で満たされた。三人は奮闘するが、群れの数は多すぎる。次第に追い詰められていく。
その時、イシェは小さな光を見つけた。洞窟の奥にある、石畳でできた通路だ。
「あそこへ！」イシェは叫びながら、通路へと走り出した。ラーンとテルヘルも、イシェの後を追い、必死に群れから逃げるようにして通路に飛び込んだ。
通路の先には、広がる平原が広がっていた。三人は息を切らしながら、振り返った。群れは、洞窟の入り口まで戻り、再び闇の中に消えていった。