ラーンが遺跡の入り口に立ち尽くしているのを見て、イシェはため息をついた。「また、大穴だなんて言ってるよ」。
ラーンの瞳は輝いていて、まるで目の前で財宝が踊っているようだった。イシェはそんな彼を少し哀れな気持ちで見つめた。「あの絵は本当にあったのかしら?」と呟くと、ラーンは目を丸くして「本当だぞ!ビレーの古い家に飾られていたんだ!」と熱く語った。
そこにテルヘルが現れた。「準備はいいか?」と彼女は涼しい声で言った。彼女の顔立ちには、鋭い美しさがあった。まるで、剣を研ぐように冷たく、そして美しく。イシェは思わず目を奪われた。
「よし、行こう!」ラーンが先頭を切り、遺跡へと入っていった。イシェはテルヘルに少しだけ後ろ向きで歩いた。「あの絵、本当に信じていいのかな?」と尋ねると、テルヘルは小さく笑った。「信じなくてもいい。私にとっては、その絵はただの道案内に過ぎない」。
遺跡の中は薄暗く、湿気が漂っていた。ラーンの足音だけが響き渡り、イシェの心臓は高鳴っていた。彼女はテルヘルの後ろを歩きながら、彼女の背中にそっと手を伸ばした。冷たさと同時に、どこか温かいものを感じた。
「何か感じる?」とテルヘルが振り返った。イシェは慌てて手を引っ込めた。「いいえ、何も」。
遺跡の奥深くで、ラーンが何かを発見したらしい。興奮した声で叫んだ。「見つけた!大穴だ!」イシェは駆け寄り、彼の指さす方向を見た。そこには、巨大な石棺があった。その上には、輝きを放つ宝石が埋め込まれていた。
「まさか…」イシェは息を呑んだ。ラーンの夢が、ついに現実になったのかもしれない。
しかし、その時、地面が激しく揺れ始めた。石棺から、黒い煙が立ち上り、不気味な光を放った。ラーンは剣を抜き、テルヘルも鋭い目で周囲を見渡した。「何かがいる!」とラーンが叫んだ。
イシェは恐怖で体が震えた。美しさと冷たさを併せ持つテルヘルの後ろに隠れるように立ち尽くす。この遺跡には、想像を超える危険が潜んでいたのだ。