ビレーの夕暮れは、まるで燃えるようなオレンジ色と紫色の絵の具を混ぜたような鮮やかさで、街を包んでいた。ラーンは、イシェがいつも持ち歩いている古い地図を広げながら、今日の遺跡について熱く語っていた。
「ほら、イシェ、見てみろ! この記号、もしかしたら古代ヴォルダン文明の秘宝を示すものじゃないか? 」
イシェは、ラーンの興奮を少しだけ冷やすように言った。
「ラーン、またそんな夢を見てるのか? それより、今日の報酬はちゃんと貰えるか心配だぞ。テルヘルはいつも約束を破るんじゃないかと疑ってるんだ」
ラーンの笑顔が少し曇った。「大丈夫だ、イシェ。今回は違うって信じてる。テルヘルが言うには、この遺跡にはかつてヴォルダン王の肖像画が隠されているらしいんだ。もし本物なら、莫大な価値があるぞ!」
イシェはため息をついた。「ラーン、君は本当に絵を描くのが好きなんだな。あの肖像画を想像して興奮してるんじゃないか?」
ラーンの瞳は輝いていた。「いや、イシェ、今回は違う! この遺跡には何か特別な力を感じるんだ。まるで、あの絵の中に隠された物語が、僕たちを待ってるみたいなんだ」
イシェは、ラーンの熱意に押されるように、小さく頷いた。二人は、夕暮れのオレンジ色の光に照らされながら、遺跡へと向かって歩き出した。テルヘルは、すでに遺跡の入り口で待っていた。彼女は黒曜石のような瞳で、二を見下ろすように言った。
「準備はいいか? 今夜は、ヴォルダン帝国の闇を暴く夜になるだろう」