「おい、イシェ、今日は俺が先頭だ!」ラーンが剣を肩越しに構え、遺跡の入り口へと入っていった。イシェは小さく溜息をつき、後を追った。「いつも通りだな」。
薄暗い通路は湿気で冷たかった。ラーンの足音だけが響き渡り、緊張感が張り詰めていた。すると、通路の先に赤い光がぼんやりと浮かび上がってきた。
「何かあるぞ!」ラーンは剣を握りしめ、興奮気味に言った。「宝だ!きっと大穴だ!」イシェは少し引いてラーンの後ろから様子を伺うことにした。
赤い光が近づくにつれ、その正体が明らかになった。それは巨大な宝石の扉だった。扉には精巧な彫刻が施され、その美しさに息をのむほどだった。ラーンの横でイシェは言葉を失った。
「よし、開けてみよう!」ラーンが扉に触れると、扉はゆっくりと開き始めた。
扉が開ききると、そこには広大な部屋が広がっていた。部屋の中央には、宝石の光を浴びて輝きを増す、美しい女性の姿があった。彼女は長い銀色の髪に、透き通るような白い肌を持ち、まるで妖精のようだった。
「わぁ…」ラーンは息をのんだ。「なんて美しい…」
イシェも言葉を失い、ただ見つめることしかできなかった。
しかし、その美しさの裏には、何か不吉なものが潜んでいるようだった。女性はゆっくりと立ち上がり、冷たい目つきで二人を見下ろした。
「ようこそ、迷い込んだ者たち」彼女の声音は美しく響き渡ったが、その中に冷酷さと危険を感じさせるものがあった。「この場所から出るには、試練を乗り越える必要がある」