ラーンの重い足音が石畳の上で響く。イシェは彼の背後から少し離れて歩き、視線を遺跡の入り口に向けながらため息をついた。「本当にここに眠っているのかね？あの伝説の宝」
「ああ、きっとな！俺が感じるぜ、この場所には何かがあるって！」ラーンは振り返り、自信満々に笑った。イシェは彼の顔を見つめると、小さく微笑んだ。ラーンの無邪気さは、時にイシェを苛立たせることもあったが、どこか憎めない魅力があった。
「よし、準備はいいぞイシェ！」ラーンは剣を構え、遺跡へと足を踏み入れた。イシェは彼の後ろを歩きながら、小さく頷いた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気で満たされていた。壁には苔むした石造りの彫刻が並んでいるが、その多くは崩れ落ち、時代を重ねた荒廃ぶりを見せている。
「ここだな」テルヘルが声を張り上げた。彼女は先頭を進み、一枚の石板を指さした。「ここに記されているのは、宝の隠し場所を示す地図だ」
イシェは石板に刻まれた複雑な模様を確かめた。「確かに地図みたいだが…解読できるのか？」
「任せておけ」テルヘルは自信たっぷりに言った。彼女は小柄な体ながら、鋭い眼光と凛とした立ち振る舞いを持つ美しい女性だった。その美しさは、荒廃した遺跡の中にいる彼女をより一層際立たせ、まるで古代の女神のような印象を与えた。
「これで宝への道が開ける」テルヘルは地図を手に、先頭を進み始めた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせ、小さく頷いた。彼らの前に広がるのは、未知の世界だった。
しかし、その世界には希望と危険が渦巻いていることを、彼らはすでに知っていた。