ラーンの大雑把な指示に従い、イシェが慎重に石畳を踏んで進んだ。薄暗い遺跡内部は湿り気があり、苔むした壁からは冷気が漂う。 torchlightの光が壁に映る影は、まるで踊る亡霊のように見えた。「ここだな」ラーンが、興奮気味に大きな石扉を指さす。イシェは扉の表面に施された複雑な文様をじっと見つめた。美しい幾何学模様は、まるで古代文明の知恵と美意識を凝縮したかのようだ。
「本当にここに何かあるのか？」イシェが呟くと、ラーンは豪快に笑った。「お前が言うように、遺跡には必ず何かがあるって！あのテルヘルも、ここを重要視してるんだろ？俺たちに頼んだのは、大穴を見つけるためだ！」ラーンの目は輝いていた。
イシェは少し複雑な気持ちだった。確かにテルヘルの依頼は魅力的だった。高額な報酬と、遺跡の探査権。そして、もしかしたら本当に大穴が見つかるかもしれないという期待。しかし、その一方で、何か不吉なものを感じたのも事実だった。扉に刻まれた文様から感じる美しさの裏に、何か恐ろしいもの、あるいは悲しい物語が隠されているような気がしたのだ。
「よし、開けようぜ！」ラーンが力強く扉を押し始めた。重い扉はゆっくりと開き始め、内部からの冷気と共に、かすかな光が漏れてきた。イシェは緊張感で心臓が高鳴る中、扉の向こう側に目を向けた。そこには、広大な石畳の部屋が広がり、その中心には、水晶細工でできた巨大な球体があった。球体は複雑な模様で覆われており、まるで宇宙を表現したかのようだ。その美しさに息をのんだイシェは、同時に、この球体が秘めたる力と危険を感じた。
「見ろよ！すごいだろ！」ラーンの声が響き渡ったが、イシェはラーンの興奮とは対照的に、不吉な予感を拭い去ることができなかった。球体の美しさの裏に潜む何か、それは彼らを飲み込む暗黒の淵になるかもしれない。