ラーンの大雑把な計画に従い、イシェが慎重に地図を睨みながら遺跡の入り口へと足を踏み入れた。薄暗い通路は湿り気があり、まるで巨大な生き物の内部に迷い込んだかのようだと思った。テルヘルは後方から二人を見下ろすように歩いていた。彼女の視線は鋭く、常に周囲を警戒しているように見えた。
「ここなら安全だ」とラーンが言い放つと、イシェはため息をつきながら懐中電灯を点けた。壁には苔むした石畳が敷かれ、ところどころに崩れた箇所の隙間から水滴がポタリと落ちていた。その水滴が地面に落ちると、かすかに白い煙と共に消えていった。
「何か変だな」イシェは眉をひそめた。「この水、何か含んでいる気がする」
ラーンは気にせず、石畳の隙間を覗き込んだ。「な、何だこれは！？」
彼の叫び声にテルヘルが駆け寄ってきた。「何があった？」
「見てみろよ、こんなところに宝箱があるなんて！」ラーンは興奮気味に石畳の隙間から覗き込む。イシェも覗き込み、顔色を蒼白にした。そこには、まるで羊水のように透き通った液体で満たされたガラス瓶がいくつも並んでいた。
「これは…」イシェは言葉を失った。瓶の中には、まるで胎児のような小さな形をしたものが浮かんでいるのが見えた。それは生命の輝きを放ちながらも、どこか不気味な美しさを持っていた。
テルヘルは冷静に状況を把握し始めた。「何らかの古代の儀式に使われたものかもしれない。価値がある可能性が高い」彼女は瓶の一つを持ち上げようとしたが、イシェは彼女の手を制止した。
「待て！」イシェは不安そうに言った。「この場所には何か邪悪な力を感じたことがあるんだ。触るべきではない…」
しかし、テルヘルの目はすでに瓶に釘付けになっていた。復讐のためにはどんな犠牲も厭わないのだ。彼女はイシェの言葉を無視して瓶を持ち上げた瞬間、通路全体を包み込むような不気味な光が爆発した。