「よし、今回はあの崩れかけた塔だな」
ラーンが拳を握りしめた。イシェは眉間に皺を寄せて地図を広げた。
「あの塔は危険だって聞いたことがあるわよ。迷路みたいで、出口が見つからないって」
「そんなこと言わずに、ワクワクするじゃないか!ほら、テルヘルさんもそうでしょう?」
ラーンが振り返ると、テルヘルは静かに羅針盤を眺めていた。
「塔の内部には磁場異常があると記録されている。羅針盤の針が狂う可能性がある」
テルヘルの言葉にイシェはため息をついた。
「また危険な場所か…」
ラーンの興奮とは対照的に、イシェは常に冷静さを保とうとしていた。だが、ラーンと行動を共にしている以上、危険を避けることはできないのだ。
「よし、準備はいいか?俺たちが大穴を掘り当ててやる!」
ラーンの豪快な声に、イシェは小さく頷いた。テルヘルは羅針盤を胸元にしまい、鋭い視線で塔を見つめた。彼女の心には復讐の炎が燃えており、その炎はどんな危険も乗り越えられるほどの熱量を持っていた。
三人は崩れかけた塔へと足を踏み入れた。