ラーンが剣を抜き放つ音が、埃っぽい遺跡の空気を切り裂いた。目の前には、石化した獣の骸が崩れ落ちた、巨大な穴が開いていた。
「やったぜ、イシェ！ついに大穴だ！」
ラーンの興奮した声に、イシェは眉間に皺を寄せる。「まだ分からない。それが本当に大穴かどうかは、中を確認してみないと」
テルヘルは冷静に状況を分析していた。「遺跡の構造から判断すると、ここには何らかの仕掛けがあるはずだ。警戒を怠るな」
ラーンはイシェの言葉を無視し、穴の中に飛び込んだ。彼の背後から、テルヘルが続く。イシェはため息をつきながら、二つの影を追いかけた。
穴の中は予想以上に広かった。天井から伸びる岩柱が、不気味な光を反射させている。床には、奇妙な文様が刻まれた石版が敷き詰められていた。
「これは…」
イシェが石版に触れた瞬間、地面が激しく揺れ始めた。壁から石が崩れ落ち、ラーンは慌てて身をかわした。「何だこれは！」
テルヘルが石版を睨みつけた。「罠だ。この遺跡には、誰かが仕掛けた危険な装置がある」
その時、天井から巨大な影が迫ってきた。それは、石化した獣の骸の巨大な頭部だった。獣の目は赤い光を放ち、鋭い牙がラーンに向かって突き刺さろうとした。
「ラーン！気をつけろ！」
イシェの叫びが響き渡る中、ラーンの剣が獣の頭部に深く突き刺さった。しかし、獣は怯むどころか、さらに激しく動き始めた。
「やばい！この遺跡は俺を殺そうとしてるぞ！」
ラーンの絶叫が、遺跡の奥深くに響き渡る。その時、テルヘルが何かを呟いた。「署名...ここに署名がある」
彼女の視線は、石版に刻まれた複雑な模様を追っていた。そして、その模様の中に、小さく、かすれてしまった文字列を見つけた。
「これは…ヴォルダン王家の紋章だ」