「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。地図によると、地下室にはヴォルダン時代の遺物らしいぞ」
ラーンの興奮した声にイシェはため息をついた。「またそんな大層な話をするじゃないの。いつもそうだけど、結局は錆びた武器や割れた壺ばかり見つけるじゃないか」
「今回は違うって!だってテルヘルが言うんだろ?あの遺物はヴォルダンが滅ぼした部族のものらしい。価値あるものだぞ!」ラーンは目を輝かせながら剣を構えた。
テルヘルは冷徹な表情で地図を広げた。「情報源は確実だ。地下室には、ヴォルダンの軍が恐れを抱いたという『禁断の書』があるらしい」
イシェは不安そうに言った。「そんな危険なものを探すなんて…」
「危険と隣り合わせこそ遺跡探索の魅力だろ!」ラーンは笑って塔へと向かった。テルヘルも彼に続いて歩き出す。イシェはため息をつきながら後を続けた。
崩れかけた階段を登ると、朽ち果てた扉が現れた。テルヘルが慎重に鍵を開け、中へ入った。薄暗い地下室は、埃とカビの臭いが充満していた。壁には奇妙な模様が刻まれていて、不気味な雰囲気を醸し出している。
「ここだ!」ラーンが奥の部屋へと走り込んだ。そこには石の祭壇があり、その上に古い本が置かれていた。
「禁断の書だ…」テルヘルは声を震わせた。
しかし、その瞬間、床から黒い煙が立ち上がり、部屋を満たした。イシェは咳き込みながら振り返ると、ラーンが苦しげに倒れているのに気づいた。
「ラーン!」イシェは駆け寄り、彼の肩を叩いた。「どうしたの?」
ラーンの顔は青白く、目は血走っていた。「体が…動かない…」
テルヘルが本に手を伸ばそうとしたその時、部屋全体が震え始めた。壁から不気味な声が聞こえてくる。
「これは…!」イシェは恐怖で言葉を失った。
突然、石の祭壇から黒い影が立ち上がり、ラーンを包み込んだ。ラーンの悲鳴が響き渡る中、影は彼を引きずり込み、地面に消えていった。
テルヘルは驚愕し、イシェは絶望した。
「ラーン!」イシェが叫んだ。「何があったのですか?」
テルヘルは冷静に言った。「この書には、ヴォルダンが封印した罰則が記されている。触れた者は罰を受けるのだ」
イシェは理解した。ラーンの無謀な行動が招いた罰だった。そして、その罰は彼自身にも降りかかる可能性があることを…。