ラーンの粗雑な剣の一撃が埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへと響き渡った。イシェは眉間に皺を寄せながら、崩れそうな石柱の間を慎重に進んでいった。
「本当にここなのか?こんな薄暗い場所で、大穴なんて見つかるわけないだろう」
イシェの言葉にラーンは肩をすくめた。「お前が言うな、イシェ。あのテルヘルは嘘をつかないぞ。ここは必ず何かがあるはずだ」
テルヘルは遺跡の入り口で彼らを見送った後、影のように消えていった。彼女の目的はあくまでヴォルダンへの復讐であり、遺跡探索は手段に過ぎなかった。ラーンの腕力は利用する価値があると判断しただけで、彼らを信頼しているわけではない。
イシェはそんなテルヘルの真意を察しながらも、ラーンの熱気に押されるように進んでいくしかなかった。彼自身も、いつか大穴を見つけるという夢を諦めきれていなかったからだ。
「おい、何かあったぞ!」
ラーンの声が響き、イシェは慌てて駆け寄った。崩れた壁の隙間から、光る金属が見えた。
「これは…!」
イシェが慎重に埃を払うと、そこには精巧な金色の歯車が現れた。複雑に組み合わされた歯車は、まるで生きているかのように脈打つように輝いていた。
「これは…何か特別な遺物らしいぞ」
ラーンの興奮を抑えきれない様子を見たイシェはため息をついた。この遺跡が本当に大穴につながるのか、それともまたしても空振りに終わってしまうのか。イシェは迷いながらも、彼らと共にその謎に挑むことを決意した。