「おい、イシェ、こっち見てみろよ！」ラーンが興奮気味に叫びながら、石碑の脇にある窪みに手を差し伸べた。イシェはため息をつきながら近づいた。「またか…何だ、ただの石ころじゃないか」石ころを拾い上げると、ラーンの顔色が曇った。「そうだな…」イシェはラーンの肩を軽く叩き、「今日はもう帰ろう」と提案した。日が暮れ始め、辺りは薄暗くなっていた。
「待てよ！」突然、テルヘルが駆け寄ってきた。「この石ころ…見ろ、ここに刻印があるぞ！」彼女は石ころを指さし、興奮気味に言った。「これはヴォルダンの紋章だ。ここに遺跡があった다는ことは…」テルヘルの目は燃えるように輝いていた。
ラーンは少し戸惑いながらも、テルヘルの熱意に押されるように、再び石ころを手に取った。イシェは、ラーンの顔をじっと見つめた。「何か変だな…」と呟いたが、ラーンの心はすでに遺跡探検の熱気に包まれていた。イシェの言葉は届かなかった。
3人は夜遅くまで遺跡を探し続けた。ついに、石碑の奥深くから、朽ち果てた扉を発見した。テルヘルは興奮を抑えきれずに言った。「ここだ！ヴォルダンに奪われた宝物が入っているはずだ！」
扉を開けると、中は暗闇で満たされていた。ラーンが火の粉を散らし、ゆっくりと中へと足を踏み入れた。イシェはラーンの後を歩き、テルヘルは最後に続くようにした。
部屋の中央には、金銀財宝が山積みになっていた。宝の山を見たラーンは思わず声を上げた。「やった！ついに大穴を見つけたぞ！」イシェは宝の山に目を輝かせながらも、どこか心落ち着かないものを感じていた。
その時、テルヘルが何かを発見したようだ。彼女は宝の山を掻き分け、小さな箱を取り出した。「これだ！」彼女は箱を開け、中にある一枚の紙を取り出した。「ヴォルダンの記録…ここに全てが書かれている」と呟いた。
イシェは、テルヘルの顔色から何かを感じ取った。それは喜びではなく、どこか悲しげな表情だった。「テルヘル…」イシェの声を聞き、ラーンもテルヘルに目を向けた。彼女の目は涙で濡れていた。「この記録…ヴォルダンが私の家族を殺したのは、この遺跡の財宝を守るためだったんだ…」
ラーンの顔色が真っ青になった。イシェは深く息を吸い、ゆっくりと言った。「ラーン、僕たちは何か悪いことをしたかもしれない」
テルヘルは涙を流しながら、紙を握りしめ、「でも…私は復讐を果たさなければ…」と呟いた。ラーンは何も言えず、ただ床を睨んでいた。イシェは、自分の罪悪感に押しつぶされそうになった。彼らは何のために遺跡を探していたのか？本当に「大穴」を見つけたのだろうか？その答えは、彼らの心に深い影を落とすこととなった。