ビレーの朝焼けに染まる空の下、ラーンはいつものようにイシェを待っていた。イシェはいつも通り遅刻している。
「おい、イシェ!いつまでも寝てると遺跡に遅れるぞ!」
ラーンの呼び声に応じず、イシェの家から煙が立ち上る。少し焦ったラーンは、イシェの家の裏口を叩いてみた。「イシェ、どうしたんだ?具合でも悪いのか?」
すると、イシェの母親が顔を見せた。「ああ、ラーンさん。イシェは今朝、ヴォルダンからの使者が来たんですって。何か用事があるようです」
「ヴォルダン!?」ラーンの顔色が変わった。「何でそんなところに…」
イシェの母親は深く息を吸い、「イシェには言えないことがあるみたいなんです。私もよく分かりませんけど…」
ラーンはイシェの家を後にし、不安な気持ちを抱えながら遺跡へ向かった。いつも通りの遺跡探検とは違う、不穏な空気がラーンの心を支配していた。
テルヘルとの待ち合わせ場所に着くと、彼女は既にそこにいた。黒曜石のような瞳がラーンを見つめ、「準備はいいか?」と冷たい声で尋ねた。
ラーンは頷き、「イシェは…」と口を開こうとしたが、テルヘルはそれを遮った。「今日は彼なしで行く。重要な仕事があるんだ」
ラーンの脳裏に、イシェの母親の言葉が蘇った。「イシェには言えないことがある…」。イシェがヴォルダンに何か秘密を抱えていることは明らかだった。そして、それはラーンにとって危険な秘密である可能性もあった。
「わかった…」ラーンは小さく呟き、テルヘルと共に遺跡へと足を踏み入れた。しかし、心は落ち着かなかった。イシェの秘密、そしてヴォルダンの影。ラーンの胸には不安と怒りが渦巻いていた。
遺跡内部深くで、彼らは古代の遺物を発見した。しかし、その輝きはすぐに消え、代わりに不吉な予感がラーンを襲った。
「これは…」テルヘルは顔色を変え、「罪人の呪い…か」
その瞬間、遺跡は激しく揺れ始めた。壁から奇妙な光が放たれ、ラーンの視界が歪んでいくように感じた。
ラーンは恐怖を感じながらも、イシェのことを考えると怒りが込み上げてきた。「イシェは…何をしているんだ…」と呟きながら、彼は運命の歯車を覆そうと立ち向かうことを決意した。