ラーンの粗雑な斧の一撃が、埃っぽい遺跡の壁に深く食い込んだ。石塵が舞い上がり、イシェは咳き込みながら顔をしかめた。「また壊しちまったじゃないか…」
「気にすんなって!ほら、ここ見てみろ!」
ラーンが興奮気味に指差す先には、壁の奥からわずかに光るものが見えた。イシェは懐中電灯を向けると、そこには小さな金色の箱があった。
「やったな!これでまた酒が飲めるぜ!」
ラーンの顔には満面の笑みが広がるが、イシェはどこか落ち着かない。この遺跡は、以前から何かがおかしいと感じていた。いつもとは違う空気が漂い、背筋が凍るような感覚がするのだ。
「おい、イシェ、どうしたんだ?顔が引きつってるぞ」
ラーンの声に我を返したイシェは、無理に笑顔を浮かべた。「ああ、なんでもないよ。疲れただけだ」
その時、箱から不気味な音がした。まるで、何かが中から這い出すような音だった。ラーンとイシェは同時に振り返った。
すると、箱の蓋がゆっくりと開き始めた。そこから、白い光が漏れてきた。そして、その光の中に、うっすらと人の形をした影が見えた。それは、まるで…繭のようなものだった。
「何だこれは…」
ラーンの声が震えていた。イシェも言葉を失った。恐怖が二人を押しつぶすように迫ってくる。その時、テルヘルが駆け込んできた。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
テルヘルの鋭い視線は、すぐに箱に注目した。そして、その顔色が変わった。
「これは…まずい。早く逃げろ!」