「よし、今回はあの崩れた塔だな。噂では最下層に何かが残されているって話だ」ラーンが目を輝かせながら地図を広げる。イシェは眉間に皺を寄せる。「またそんな噂話か。一体どれだけの遺跡を掘り返しても何も見つからなかったってのに。」「いや、今回は違うって気がするんだ！」ラーンの熱意にはイシェもどうすることもできない。「で、あのテルヘルはどうする？あの冷酷な女が一緒にくるわけないだろ？」
「ああ、あれは俺たちのこと見下してるよな。あの目つき、まるで俺たちを虫けらみたいに見といてたぞ」ラーンが憤慨する。「でも今回は違うんだ。あの遺跡にはテルヘルも興味があるらしい。何やらヴォルダンとの関係で重要な情報が隠されているって話だ」イシェは冷静に説明する。「ヴォルダン…。」ラーンの表情が曇る。「ああ、あの女には過去を忘れさせるだけの理由があるんだろうな。俺たちには関係ないことだが…」
崩れた塔の入り口に三人が立ち止まる。薄暗い通路から湿った風が吹き出してくる。「よし、行くぞ！」ラーンは先頭を切り、イシェが続き、テルヘルが最後に続く。塔の中は暗く、埃っぽい空気が漂う。足元には崩れ落ちた石や朽ち果てた柱が散らばっている。
「ここには何かがいる…」イシェは背筋が寒くなるのを感じた。「静かすぎるんだ…。」ラーンの視線は鋭く周囲をくまなく探す。テルヘルは沈黙を守り、常に警戒している。彼らは塔の奥深くへと進むにつれて、壁に描かれた奇妙なシンボルが目に入るようになる。
「これは…」イシェがため息をつく。「古代の文字だ。あの遺跡から発掘されたものと同じだ」ラーンの表情が硬くなる。「このシンボルは…繁殖を意味するんだ。何かがここを…。」彼の言葉を遮るように、壁に埋め込まれた石が光り始めた。
「何だこれは！？」ラーンが叫ぶと同時に、石から黒い煙が噴き出す。煙が渦を巻きながら広がり、三人の姿を見えなくしてしまう。「これは…！」テルヘルが声を張り上げる。「ヴォルダンが仕込んだ罠だ！」煙が収まり、再び視界が開けると、三人は見慣れない場所に立っていた。そこは広くて暗い部屋で、壁一面に奇妙な卵がびっしりと並んでいる。卵は脈動し、不気味な光を放っている。
「これは…！」イシェが言葉を失う。「繁殖…。あのシンボルが示していたのは…。」ラーンの顔色が変わる。「何かが…この卵から孵るのを待っている…。」テルヘルは冷静に状況を分析する。「ヴォルダンはこの遺跡を利用して、何か恐ろしいものを生み出そうとしている。そして、それを利用して世界を支配しようとしているのだ！」
三人は卵の周りをゆっくりと歩きながら、次の行動を考える。彼らの前に立ちはだかるのは、未知なる恐怖と、ヴォルダンの野望を阻止する使命だった。