日差しが容赦なく降り注ぐビレーの市場で、ラーンは熱心に値切り合いの末、使い古されたロープを手に入れた。「これで今日の食費も確保だ！」と彼はイシェに得意げに言ったが、イシェは眉間に皺を寄せながら、「また遺跡探索で失敗したのか」とため息をついた。
「失敗じゃない！あの崩れかけた塔の奥深くまで進んでみろって言ってるんだぞ？あれには何かあるって感じるんだよ！」ラーンの目は輝いていた。しかし、イシェは彼の熱意に冷や水を浴びせるように言った。「感じることと現実とは違うのよ。それに、今日の探索費用はテルヘルからもらったお金で賄うべきでしょう？」
その時、背後から声がした。「ああ、イシェさん、いつも冷静で頼りになるわね。」テルヘルが微笑みながら近づいてきた。彼女の鋭い眼光がラーンを一瞬だけ刺すように見えた。「今日は新たな遺跡の情報を入手したのよ。ヴォルダンとの国境付近にあるという、かつて繁栄した都市の跡らしいわ」
ラーンの耳はぴくぴくと動いた。「古代都市！そりゃ大穴になるかもな！」彼は興奮気味に言ったが、イシェは冷静に状況を判断しようとした。「テルヘルさん、その情報源は確実ですか？ヴォルダンとの国境付近は危険な場所です」
「もちろん、信頼できる情報よ。」テルヘルは自信ありげに答えた。「そして、その都市には、かつての繁栄の証であるとされる貴重な遺物が眠っていると噂されているのよ。ラーンさん、イシェさん、この機会を逃す手はありませんわ」
ラーンの顔は喜びで輝き、イシェはテルヘルの言葉に深く考え込んだ。古代都市への探索は危険だが、繁栄の象徴である遺物があれば、ビレーでの日暮らしから抜け出せるかもしれない。二人は互いに言葉を交わすことなく、それぞれの思いを抱えながら、テルヘルに従い遺跡へと向かった。