ラーンの大柄な体躯が遺跡の狭い通路を塞ぐように進んだ。イシェは彼の後ろを少し離れて慎重に足取りを確かめた。埃っぽい空気に混じる湿った土の匂いは、まるでこの地下空間が何世紀も眠り続けていることを物語っていた。
「本当にここにあるのか？」イシェが呟いた。「あの地図は...」
ラーンは振り返らずに言った。「大丈夫だ。テルヘルが言うなら間違いない。それにほら」
彼は壁に沿って伸びるひび割れを指さした。そこにはかすかに青白い光が滲んでいた。それはまるで、この遺跡の奥深くで何かが脈打っているかのようだった。
「あの光は...何か違う気がする」イシェの眉間に皺が寄った。「今まで見たことのないような...」
ラーンの胸の高鳴りは抑えきれなかった。大穴、巨大な財宝、そして冒険の興奮。それらが彼を突き動かしていた。
「さあ、イシェ！行くぞ！」
ラーンは走り出した。イシェはため息をつきながら彼の後を追った。狭い通路は次第に広がり、やがて大きな空間に繋がった。そこには巨大な石造りの構造物がそびえ立っていた。天井から降り注ぐ光は、その表面を青白く輝かせ、まるで生きているかのように見えた。
「これは...」イシェの言葉が途絶えた。目の前の光景は想像をはるかに超えていた。
巨大な石造りの構造物は、まるで縮尺が狂ったかのような壮大なもので、その複雑な模様と幾何学的なデザインは、何千年もの時を経てもなお輝きを失っていなかった。そしてその中心には、脈打つような光が放たれている巨大な球体があった。
ラーンは息を呑んだ。
「これが...大穴か？」
イシェは言葉を失ったまま、その光景に見入っていた。
テルヘルは冷静に言った。「ここだ。ヴォルダンが何としても手に入れようとしているもの。」
彼女の目は鋭く光り輝き、復讐の炎を燃やしていた。