ビレーの夕暮れ時、ラーンとイシェは疲れた体を引きずって酒場で一杯飲んでいた。今日の遺跡探索は空振りに終わり、二人はいつものように財布が寂しい状態だった。
「まったく、今日は何も見つからなかったじゃないか。あの巨大な石碑に何かあると思ったのに…」
ラーンの不満げな声に、イシェはため息をついた。
「言っただろう、あの石碑はただの飾りだと言っただろう。それに、遺跡探索の成功率なんて低いものだ。もっと現実的に考えろよ。」
ラーンの楽観的な性格とイシェの慎重さは、いつも対照的だった。だが、二人は幼馴染であり、互いに深く信頼し合っていた。
その時、扉が開き、テルヘルが店に入ってきた。彼女の鋭い視線は、疲れた二人の姿に一瞬留まった後、バーカウンターに向かった。
「今日は何も収穫がなかったようですね。」
テルヘルの言葉は冷淡だったが、ラーンの表情は少しだけ明るくなった。
「ああ、そうだな。だが、次はきっと何か見つかるさ!いつか大穴を掘り当てるんだ!」
ラーンはいつものように豪語したが、イシェは彼の視線に何かを感じ取った。ラーンの瞳には、今日の失敗からくる挫折感ではなく、どこか別の感情が浮かんでいた。それは、まるで...縛り付けられているかのような、諦めと希望が混ざったような表情だった。
テルヘルはラーンの様子を静かに見つめていた。彼女は彼の言葉の裏にある真実を知っていた。ラーンは、単なる財宝を求める探検家ではない。何か別の、彼自身もまだ意識していない何かを探しているのだ。それは、彼の人生を縛り付ける鎖であり、同時に彼を前進させる力でもある。
「次の探索場所が決まった。今回はヴォルダンに近い遺跡だ。」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェは顔を合わせた。ヴォルダンとの国境付近の遺跡は、危険なだけでなく、謎も多い場所だった。だが、彼らの運命を変えるような何かがあるかもしれないという予感が、二人の心を強く揺さぶった。
彼らは、縛りから逃れるように、そして縛りによって導かれるように、新たな遺跡へと向かうことを決意した。