ラーンが巨大な石の扉をこじ開ける音だけが、埃っぽい遺跡の静寂を破った。イシェは後ろから「本当にここなのか？ また騙されたらどうしよう」とぼやいた。
「大丈夫だ、イシェ。今回は確信があるんだ」ラーンは自信満々に言ったが、彼の顔には汗が滲んでいた。
テルヘルが彼らを雇ったのは、古い地図に記された「縁結びの泉」を探すためだった。伝説によると、泉の水を飲むと、どんな願いも叶うという。テルヘルはヴォルダンへの復讐を果たすためにその力を手に入れようとしていた。
イシェは半信半疑だったが、ラーンはいつも通り夢中になっていた。彼は「大穴」を探すよりも、伝説の泉に魅せられていたのかもしれない。イシェは彼を心配した。ラーンの熱意は時に危険なまでに強引で、イシェはいつも彼の後始末をすることに疲弊していた。
扉が開くと、そこには広大な地下空間が広がっていた。壁には複雑な模様が刻まれており、中央には小さな泉があった。泉の水面は淡い青色に輝き、その周りには花が咲き乱れていた。
「これが…縁結びの泉か…」テルヘルは目を輝かせた。ラーンも興奮気味に泉に向かって歩み寄った。しかし、イシェは何かを感じ取った。この空間には奇妙な静寂が漂い、空気が重く感じられた。
その時、壁から光が放たれ、部屋中に模様が浮かび上がった。それはまるで、何かのメッセージのように見えた。イシェは目を凝らして読み解こうとした時、ラーンの叫び声が響いた。
「うわああっ！」ラーンの体が突然青い光に包まれ、泉に向かって吸い込まれていった。イシェとテルヘルが驚いて駆け寄ると、泉から溢れ出す青い光が彼らを襲った。
イシェは目を閉じ、光に包まれる感覚を味わった。そして、気がつくと、彼はラーンと一緒に別の場所に立っていた。そこは緑豊かな草原で、空には二つの月が輝いていた。
「ここは…どこだ？」イシェは戸惑いながら言った。ラーンの顔には恐怖の色が見え隠れしていた。
その時、彼らの前に一人の女性が現れた。彼女は美しく、穏やかな笑顔を浮かべていた。
「ようこそ、縁結びの泉へ」女性は言った。「あなたは運命の糸で結ばれている二人です。この場所で、あなたたちの願いが叶えられるでしょう。」