ビレーの薄暗い酒場には、いつもよりざわめきが大きかった。ラーンとイシェは、いつものようにテーブルに顔を寄せ合っていた。テルヘルの影が、彼らを背後から覆うように伸びていた。
「情報らしい情報がない」
イシェは眉間に皺を寄せて言った。ラーンの視線は、酒場の奥へと向けられていた。そこでは、いつもより多くの人々が集まっており、何かを熱心に議論しているようだった。
「何で騒いでるんだ?」
ラーンが尋ねると、テルヘルは冷たく答えた。
「ヴォルダンの軍勢が、国境付近に増強されているらしい」
イシェは息を呑んだ。「そんな…」
ラーンの表情は少しだけ曇ったが、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。
「ま、俺たちに関係ないだろ?遺跡探してればええし」
しかし、テルヘルの目は鋭く光っていた。
「関係ないわけがない。ヴォルダンはエンノル連合を侵略しようとしている。そして、そのために必要なものは…」
テルヘルは視線をラーンとイシェに向けた。
「遺跡だ」