ビレーの酒場「荒くれ者の巣」は、今日も喧騒に満ちていた。ラーンが豪快に笑うたびに、イシェは眉間に皺を寄せ、テルヘルは静かに酒を傾けていた。
「おい、イシェ！またそんな顔すんなよ！今日は大穴が見つかる予感しかしないぜ！」
ラーンの言葉にイシェはため息をついた。「ラーン、いつもそう言うじゃないの。遺跡探索なんて、ほとんどの場合何も見つからないんだよ。」
「でも、いつか必ず見つかるさ！」ラーンの瞳には確信の色があった。イシェは彼のその熱意に心を打たれることもあったが、現実的な自分としてはなかなかついていくのが大変だった。
そんな時、テルヘルが口を開いた。「今日は少し違う場所へ行く。」彼女の視線は冷たく、どこか鋭い光を放っていた。「ヴォルダンとの戦いに必要な情報があるという噂の遺跡だ。危険だが、その価値は十分にある。」
イシェは不安を感じた。テルヘルの目的はあくまで復讐であり、彼女にとってラーンや自分たちは手段に過ぎないかもしれない。しかし、ラーンの熱意とテルヘルの冷酷さの間で揺れ動くイシェ自身にも、何かを探求する気持ちが芽生えていた。
一行は、ビレーから離れた山間の遺跡へと向かった。道中、絡み合うような岩肌や複雑に張り巡らされた洞窟のネットワークが、まるで巨大な網のように広がっていた。それはまるで、彼らの運命を複雑に織り成す糸のようだった。
遺跡内部では、幾重にも重なる壁と罠が待ち受けていた。ラーンの力強さとイシェの機知でなんとか突破していくが、常に緊張感が張り詰めていた。そしてついに、遺跡の奥深くにある部屋にたどり着くと、そこには複雑な模様が刻まれた石板があった。
「これは…！」テルヘルは興奮した様子で石板を調べ始めた。「ヴォルダンに関する情報が記されている可能性が高い。ここに書かれた文字は…！」
その時、部屋の床が崩れ始め、深い闇へと吸い込まれるように三人は落下していく。叫び声と共に、彼らの体は網状に張り巡らされた暗い洞窟の中に落ちていった。