日差しが容赦なく照りつける荒れ地を、ラーンとイシェは息を切らしながら駆け抜けた。背後からテルヘルが鋭い視線を送る。遺跡への道は険しく、見渡す限り枯れ果てた草木と砂塵。
「もう限界だ…」イシェは膝をついて額に手を当てた。ラーンもよろめき、剣の柄に手をこすりつける。「あの遺跡には何もないんじゃないか?」彼の声には不安が滲んでいた。
テルヘルは静かに言った。「まだ諦めるな。あの書物には明確に記されている。ここにあるはずだ」彼女の目は冷たく、揺るぎない意志を秘めていた。
彼らはヴォルダンから奪われたもの、そして復讐を果たすための鍵となる古代の遺物を探していた。その手がかりは、この荒れ果てた遺跡に眠っているとテルヘルは断言する。
「でも…」イシェはためらった。「あの書物…本当に信じていいんですか?」
テルヘルは答えずに、遺跡の入り口へと歩を進めた。崩れかけた石柱が、かつて栄華を極めた文明の残骸のようにそびえ立っている。
ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らの目の奥には、希望と不安が渦巻いていた。
遺跡内部は薄暗く、不気味な静けさに包まれていた。埃っぽい空気を吸い込みながら、彼らは慎重に足を進めた。壁面には古びた絵画や文字が刻まれており、かつてここに人が暮らしていた痕跡を物語っていた。
「ここ…何かが違う」イシェは呟いた。彼女は背筋がぞっとするような感覚を覚えた。まるで、この遺跡が彼らの侵入を拒んでいるようだった。
ラーンの剣が光った。彼の視線は鋭く、周囲を警戒していた。「気配を感じる…何かがいるぞ」
テルヘルは静かに頷き、手の中に小さな宝石のついた短剣を取り出した。それは、ヴォルダンから奪われた宝物の一つだった。
「準備はいいか?」彼女の目は冷たく燃えていた。「ここには、私たちに必要なものがある」
彼らは遺跡の奥深くへと進み続けた。その先に、待ち受ける真実と、維持するために戦う彼らの運命が待ち受けていた。