ビレーの埃っぽい路地裏で、ラーンが酒をぐびぐびと飲んでいた。イシェは眉間にしわを寄せながら彼を見下ろしていた。
「また遺跡探索で失敗したのか?」
ラーンの顔は真っ赤だった。「失敗じゃない!今回は惜しかったんだよ。あの石版、あと少しで解読できたんだ!」
イシェはため息をついた。「解読できても、ただの呪文だった可能性もあるでしょう」
ラーンの視線が遠くへ泳いだ。「いや、違う。あの石版には何かが隠されている。俺には感じるんだ」
その時、テルヘルが姿を現した。「二人は準備はいいか?」
ラーンは立ち上がり、剣を手に取った。「もちろんだ!今日は大穴が見つかるぞ!」
イシェはテルヘルの鋭い視線を感じた。彼女の目的は何か?遺跡探索の報酬だけではないように思えた。
一行はビレーの郊外にある遺跡へと向かった。そこはかつて栄華を誇った王国が滅びた場所だと言われている。遺跡の入り口には、崩れかけた石碑が立っていた。
「ここが、継承の場所なのか…」
テルヘルは呟いた。ラーンとイシェは彼女の言葉を理解できなかった。
遺跡内は暗く、湿った空気が漂っていた。壁には奇妙な絵画が描かれており、床には謎の記号が刻まれていた。ラーンは興奮気味に石を蹴飛ばし、イシェは慎重に足取りを進めた。テルヘルは二人が議論するのを聞きながら、自分の目的を胸に秘めていた。
深い闇の中に、一つの光が輝いていた。それは、古代文明が残した宝箱だった。ラーンの手が光る宝箱に触れた瞬間、石室全体が揺れ始めた。
「これは…!」
イシェの声が震えた。
宝箱を開けると、そこには一枚の地図と、古い書物が入っていた。地図は遺跡の構造図であり、書物は古代王国の歴史を記したものであった。そして、その最後のページには、ある場所を示す記号と一文が記されていた。
「継承者よ、真の力を手に入れよ」
ラーンは目を輝かせた。「ついに!大穴が見つかったぞ!」
イシェは不安を感じながら地図を眺めた。この遺跡に眠るものは、本当に宝なのか?それとも、何か恐ろしいものなのか?
テルヘルは静かに微笑んだ。彼女の目的は、この地図と書物の中にあった。古代王国の継承者とは、彼女自身のことだったのだ。