「おい、イシェ、ここぞ！」
ラーンが興奮気味に叫ぶ。イシェはため息をつきながら、彼の指さす方向を見た。薄暗い遺跡の奥深く、壁に埋め込まれた石畳の一角がわずかに浮いているのだ。
「またか、ラーン。そんな些細なことで大騒ぎしないで」
イシェはそう言いながらも、内心では少し期待が高まっていることに気づいた。彼らはここ数日、この遺跡を探索しているが、まだ何も見つかっていない。ラーンの楽観的な性格とイシェの慎重さ、そしてテルヘルが持ち込んだ情報がうまく合わさって、ついに何か収穫があるかもしれない。
「違うぞ、イシェ！今回は違う！あの石畳、よく見ると刻印があるんだ！」
ラーンは興奮を抑えきれない様子で、石畳に手を伸ばそうとした。その時、テルヘルが彼の腕を掴んだ。
「待て、ラーン。焦るな。まずは慎重に確認だ」
テルヘルは冷静に石畳を調べ始めた。彼女の鋭い眼光は細部を見逃さない。しばらくして、彼女は小さくうなり声をあげた。
「これは…古代の言語で書かれている。そして…」
テルヘルの表情が硬くなった。「これは警告だ。この遺跡には危険な罠が仕掛けられている可能性が高い」
ラーンの顔色が変わる。「そんな…」
イシェは冷静さを保ち、「テルヘル、その警告の内容を詳しく教えてほしい」
テルヘルは深く息を吸い、ゆっくりと説明し始めた。古代の言語で書かれた警告には、遺跡の奥深くに眠る強力な魔物と、それを封印するための儀式について記されていた。そして、その魔物の封印が弱まっている可能性を示唆するものだった。
ラーンの顔は青ざめた。「つまり…私たちは今、魔物を目覚めさせてしまうかもしれないということか…」
イシェはラーンをじっと見つめて、「落ち着いて、ラーン。まだ何も確定したわけではない」と言い聞かせた。
だが、イシェ自身も内心で絶句していた。彼らは一体何を暴いてしまったのだろうか。