ラーンが遺跡の入り口で深呼吸をした。埃っぽい空気の中に、どこか懐かしい匂いが漂っていた。イシェは眉間に皺を寄せながら、地図を広げていた。
「ここからは特に注意が必要だ。過去に collapse が起きた場所らしい」
イシェの声にラーンは軽く頷く。だが、彼の視線は遺跡の奥深くにある、崩れかけた壁に注がれていた。そこには、かすかに光る模様が刻まれていて、ラーンの心を躍らせた。
「大穴があるかもしれないぞ、イシェ!」
ラーンの興奮を、イシェは冷静な目で制した。
「その前に、安全確認だ。テルヘルは?」
テルヘルは遺跡の入り口で、影のように静かに佇んでいた。鋭い視線を周囲に回し、何かを察知したのか、一瞬だけ眉間に皺が寄った。
「不自然な静けさだな。警戒する」
彼女の言葉に、ラーンとイシェも緊張感が高まった。テルヘルは、ヴォルダンとの因縁から生まれた強い意志を持つ女性だ。その瞳には、常に何かを統括しようとする力強さが宿っているように見えた。
「よし、俺たちが先に行くぞ!イシェ、後ろを固めてくれ!」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。だが、彼の背中には、いつもより強い決意を感じた。彼らは、遺跡の奥へと進んでいった。彼らの背後には、テルヘルの冷酷な視線が、常に彼らを統括するように注がれていた。