「よし、今日はあの崩れかけた塔に行ってみるか!」ラーンが陽気に宣言した。イシェは眉間に皺を寄せながら、「また遺跡? そんな危険な場所に行く必要あるのかしら? 何より、あの塔は以前調査したでしょう? もう何も残っていないんじゃないの?」と反論する。
「いやいや、今回は違うんだ! 前回は入り口しか見てないんだよ! もしかしたら奥の方にはまだ何か隠されているかもしれない!」ラーンは目を輝かせながら言った。イシェはため息をつき、「ラーンの大穴探しの夢はいつまで続くのかしら…」と呟いた。
「おいおい、イシェさん。そんな顔しないでよ! 今回はきっと何か見つかるはずだ!ほら、テルヘルさんも賛成してくれてるだろう?」ラーンがテルヘルの方を向くと、彼女は冷静に頷いていた。「塔の構造図を調べた結果、地下室の可能性がある。そこにはまだ遺物が残されている可能性が高い。」
イシェはテルヘルの言葉に少し安心した。テルヘルはいつも冷静で、現実的な判断をするから、ラーンの無茶な行動に巻き込まれることは少ないのだ。だが、今回は somehow テルヘルもラーンの熱気に押され気味のように見えた。「よし、じゃあ準備だ! 大穴を見つけるために!」ラーンの興奮した声が響き渡った。
ビレーの街は統合協約によって成立した新しい国家の一員だったが、住民たちの心はまだ完全に一つになっていなかった。それぞれの村や町が独自の文化や歴史を持ち、互いに疑いの目を向けている場所もあった。ラーンたちはそんな境の国で、遺跡探しの旅を続けているのだ。
彼らは塔の入り口にたどり着き、崩れかけた石畳を慎重に歩いて進んでいった。塔の中は薄暗く、埃っぽい空気でいっぱいだった。「ここは本当に安全なのかしら…?」イシェが不安そうに呟いた。ラーンは「大丈夫だ! 僕は必ず守るから!」と胸を張ったが、彼の表情にも少し緊張の色が見えた。
彼らは塔の奥深くへと進んでいくにつれて、統合協約によって生まれた新たな国家の影を感じることが増えた。かつて独立していた小国たちが、一つの国家に組み込まれることで、それぞれの文化や歴史はどのように変化していくのか? ラーンの大穴探しの夢と同様に、この新しい国の未来もまた、まだ見ぬ未知の世界へと続く道のように思えた。