ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑った。「おいイシェ、今日の遺跡探検はどうだ?きっと大穴が見つかるぞ!」
イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンの肩を軽く叩いた。「また夢を見たのか。あの遺跡にはもう何も残っていないって何度言ったんだ」
「いや、今回は違う!俺は感じるんだ、何かがそこに眠っているって!」 ラーンの目は輝いていた。
そんな二人の前に、テルヘルが現れた。「準備はいいか?」 彼女の口調は冷たかった。「今日は特に注意が必要だ。ヴォルダンからの情報によると、あの遺跡には罠が仕掛けられているらしい」
ラーンは軽やかに立ち上がり、「罠か!それなら面白いぞ!」とばかりに剣を手に取った。イシェはため息をつきながら、テルヘルの後ろに続いた。
遺跡の入口は崩れかけていて、薄暗い通路が続く。一歩足を踏み入れると、湿った土の匂いと、どこか腐ったような臭いが漂ってきた。ラーンはワクワクしながら進んでいくが、イシェは足取りを遅らせながら周囲を警戒していた。テルヘルは常に冷静に状況を分析し、二人を導いていた。
奥へ進むにつれて、通路は狭くなり、天井からは鋭い石が突き出ていた。「ここだな」テルヘルが突然立ち止まり、壁の一部分を指差した。「この石には呪文が刻まれている。罠を解除する鍵になるはずだ」
イシェが慎重に石版に触れると、壁から光が放たれ、通路全体に複雑な模様が浮かび上がった。「これは…!」イシェは驚愕の声を上げた。
その瞬間、床が崩れ始め、ラーンはバランスを崩し、深い穴に落ちていった。「ラーン!」 イシェの叫びが響いた。
「くそっ!」テルヘルは冷静さを保ち、イシェの手を取って穴の縁から覗き込んだ。ラーンの姿は見えなかった。「大丈夫か?」
「…ああ、何とか助かった」ラーンの声がかすかに聞こえた。彼は深い穴の中にいるようだった。「でも、ここは…」
イシェとテルヘルは息を呑んだ。ラーンが落ちていった穴の底には、広大な地下空間が広がっていた。そこには、輝く宝の山と、巨大な機械装置が設置されていた。それはまるで、古代文明の遺物と見えた。
「大穴だ…!」ラーンの声が興奮気味に響き渡った。
イシェはテルヘルを見つめた。「これは…絡繰りなのか?」
テルヘルの表情は影を落としていた。彼女はゆっくりと頷いた。
「そう、この遺跡は、すべてが絡み合っていたのだ」