ラーンが巨大な石の扉をこじ開ける音が、埃っぽい遺跡内部にこだました。イシェは後ろから「本当にここに何かあるのかね?」と呟きながら懐中電灯を振る。ラーンの豪快な行動にはいつも通り呆れ顔だ。
「ほら見てみろよ、イシェ!こんな場所に大穴があるなんて、絶対に何かあるはずだ!」
ラーンが扉の奥へと踏み込むと、そこには広大な空間が広がっていた。天井から伸びる巨大な柱、壁一面に描かれた複雑な模様、そして中央に鎮座する石棺。まさに遺跡探検家の夢のような光景だった。
「うわっ…」イシェも思わず声を漏らした。「確かに大穴だ…。でも…」
彼女の視線は石棺の周りを囲む奇妙な紋章に向けられていた。どこか不気味な雰囲気を漂わせ、彼女の内なる理性に不安を呼び起こす。
その時、テルヘルが背後から低い声で言った。「この紋章…見たことがある」彼女は石棺に近づき、指先で紋章をなぞりながら呟いた。「ヴォルダンにある古い文献に記録があった。封印された何か…危険なものだと…」
ラーンの顔色が変わるのが見えた。「危険だって?そんなの知るか!大穴だ!財宝だ!」
彼は石棺に手を伸ばそうとしたが、テルヘルは彼の腕を掴んで引き戻した。「待て、ラーン!無闇な行動はするな。この遺跡には何かが眠っている。我々には手に負えないものかもしれない…」
しかしラーンの耳には届いていなかった。すでに彼は石棺の蓋を開けようとしていた。イシェは彼の行動を止めようと試みるが、遅かった。石棺の蓋が開き、そこから黒い煙が立ち上った。同時に、遺跡全体が激しく揺れ始めた。
「しまった…」テルヘルが呟いた時、もう遅かった。黒い煙は急速に広がり、三人は意識を失ってしまった。結果として、彼らは遺跡の真の目的を理解することなく、そして大穴ではなく、新たな災厄を招いてしまうことになった。