ビレーの朝焼けが、荒れた石造りの壁に淡く滲む。ラーンはいつものように、イシェを起こすために粗雑な石を投げ入れた。イシェは目を擦りながら起き上がり、「またあの遺跡か?」と呟いた。ラーンの無計画さにイシェはいつも呆れていた。
「今日は違う! 以前テルヘルが言った、あの結晶の話を思い出したんだ!」
ラーンは興奮気味に言った。イシェはため息をつきながらも、準備を始めた。テルヘルが持ち出した情報によると、近くの遺跡には巨大な結晶が存在するというのだ。それは単なる鉱石ではなく、特殊な力を秘めているらしい。
遺跡は深く暗い洞窟だった。ラーンの懐中電灯の光が、壁に沿うように伸びていく。イシェは常に周囲を警戒していた。静寂の中、かすかに不気味な音が響き渡るたびに、彼女の心臓は高鳴った。
「ここだ!」
ラーンが叫んだ。洞窟の奥深くで、巨大な結晶が光り輝いていた。それはまるで、夜空に輝く星のように神秘的だった。
テルヘルは興奮した様子で近づこうとするが、イシェは彼女の手を引っ張った。「待て! あれはただの結晶じゃないかもしれない…」
その時、地面が激しく震え始めた。洞窟の天井から石が崩れ落ちた。ラーンの剣が光り、イシェは素早くテルヘルを守った。
「何かがいる!」
ラーンが叫んだ瞬間、巨大な影が結晶を包み込み、闇の中に消えていった。
三人は互いの顔を見合わせた。彼らの前に広がるのは、未知なる恐怖の世界だった。