ラーンの大斧が石壁を粉砕した。埃が舞う中、イシェは鼻をつまんで「また無駄なことを…」と呟いた。ラーンは得意げに笑って「ほら、見ろ！ これで道が開けたぞ！」と胸を張った。だが、イシェの視線は奥へと伸びていた。そこには何もなかった。「本当に財宝があるのかね…」イシェが呟くと、ラーンの顔色が曇る。
テルヘルは冷静に地図を広げて「ここは古い文献にも記されている遺跡だ。必ず何かあるはずだ」と淡々と話した。彼女はいつもそうだった。感情を抑え、目的を達成するために必要な行動を淡々とこなす。それは経験から生まれた冷徹さだった。ラーンは彼女に憧れを抱きながらも、どこか戸惑いを感じていた。
「おい、イシェ！ 何を考えているんだ？」ラーンの声がイシェの耳元に響いた。イシェは目を覚ました。「何も…」と答えるが、心の中は不安でいっぱいだった。経験豊富なテルヘルが言うなら、確かに何かがあるはずだ。しかし、この遺跡から得られるものはいつもわずかな金貨と埃ばかりだった。
彼らは数日後、奥深くにある部屋にたどり着いた。壁には不思議な文様があしらわれ、中央には石の祭壇が置かれていた。テルヘルは興奮した様子で祭壇に近づき、その表面を撫でながら「ついに…」と呟いた。しかし、その瞬間、地面が激しく揺れ始めた。石畳が崩れ、天井から岩が落下してきた。「逃げろ！」ラーンの叫びが響く中、イシェは本能的にテルヘルの腕をつかみ、祭壇の後ろに隠れた。
激しい振動が続く中、イシェはテルヘルの顔を見た。彼女の瞳には恐怖の色が見えなかった。冷静さと決意だけがそこにはあった。そして、イシェは経験から生まれたその強さに驚きと希望を感じた。