「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂では地下に広大な部屋があるらしいぞ」。ラーンの言葉にイシェがため息をついた。いつも通り、計画性ゼロの行き当たりばったりの提案だった。「また危険な場所かい？ それに、あの塔はヴォルダン領に近いんじゃないか？」
「そんなこと気にすんな！ きっと大穴が見つかるぜ！」ラーンの目が輝き、イシェは諦めたように頷いた。テルヘルは冷静に地図を広げ、「塔の構造を事前に把握しておきましょう。出口や罠の位置を確認する必要があります」と指示した。彼女はヴォルダンとの復讐を果たすため、遺跡探索には常に慎重だった。
ビレーから塔までは数日かかる。三人は馬車に乗り込み、荒涼とした平野を走らせた。テルヘルは道中、ラーンに経営について尋ねた。「遺跡探索で得た金はどのように使うのか？ 将来の計画はあるのか？」
ラーンは一瞬考え込んだ後、「えっと、今は特に何も考えてないなぁ。いいものが見つかったらそれで十分だ」と答えた。テルヘルは眉をひそめた。「将来への投資も必要だろう。安定した生活を送るためには経営戦略が不可欠だ」。ラーンの無計画さにイシェも呆れていた。「ラーン、テルヘルさんが言うように、ちょっと考えてみない？」
「わかったわかった。でも、大穴が見つかったら、みんなで豪遊しようぜ！」ラーンの答えは相変わらずだった。テルヘルはため息をつきながら、自分たちの未来を案じた。この三人が一体どうなるのか、不安でいっぱいだった。