ラーンが遺跡の入り口で深呼吸をした。「よし、今日は必ず何か見つかるぞ！」彼の目は期待に輝き、イシェはいつものように眉間に皺を寄せた。「また大穴だなんて言わないで。そんな都合のいい話があるわけないでしょう。」
「ほら、イシェったらいつも悪いことしか考えないじゃないか」ラーンは笑い飛ばし、テルヘルの方へ視線を向けた。「今日はどうするんですか？テルヘルさん？」
テルヘルは地図を広げ、複雑な記号を指差した。「ここ。この遺跡にはヴォルダンが何らかの目的で調査していた記録がある。彼らが欲しがったものは何か、それを探すんだ。」彼女の目は冷酷に輝き、復讐心と執念が感じ取れた。
「ヴォルダンのものか…」イシェは嫌な予感を抱いた。テルヘルがヴォルダンを憎む理由は知らないが、その執念の深さは彼女自身も恐れるほどだった。
遺跡内部は湿気で充満し、薄暗い光が差し込むだけで、不気味な影が壁に揺らめいていた。「ここって本当に安全なのかい？」ラーンの言葉に、イシェは頷く。「ここはかつて組織によって管理されていた場所だ。ヴォルダンもここに何かを隠した可能性が高い。」
「組織…」ラーンは言葉を失った。組織とは、世界各地に存在する謎の集団のこと。その目的や活動は不明瞭だが、遺跡や遺物に関与していることは間違いない。テルヘルがヴォルダンと組織の関係を知っているのか、イシェは不安になった。
彼らは遺跡の奥深くへと進んでいった。崩れかけた通路を慎重に歩み、罠仕掛けの可能性に常に気を配った。そしてついに、巨大な石扉の前にたどり着いた。「ここだ」テルヘルが扉に触れると、重厚な音が響き渡り、扉が開かれた。
その向こうには、広大な地下空間が広がっていた。天井からは鍾乳石が垂れ下がっていて、中心には古代の機械装置が鎮座していた。「これは…」イシェは息を呑んだ。その装置から、奇妙なエネルギーが放たれており、空気を歪ませているようだった。
ラーンは興奮を抑えきれず、「これは大穴だ！」と叫んだ。だが、イシェは冷静に状況を判断した。「この場所には何か危険がある。組織の関与も疑われる。ここは引き返すべきだ。」
しかし、テルヘルはすでに装置に向かって歩いていた。「これはヴォルダンが欲しがっていたものだ。私は絶対に手に入れる。」彼女の目は狂気に満ちていた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせ、深い不安を共有した。