ラーンが巨大な石の扉に剣を突き立てると、轟くような音が響き渡り、埃と石塵が巻き上がった。イシェは咳き込みながら「またしても大げさな entrance だね」と呆れた様子で言った。
「いや、今回は違う！ この遺跡、なんか違う気がするんだ！」ラーンは興奮気味に扉の隙間を覗き込んだ。「ほら、あの奥に見えんの？ きっと何かすごいものがあるはずだ！」
イシェは彼の背後から扉の隙間を覗き込んだ。「ただの壁じゃないのかしら…」
「そんなわけない！ 絶対に何かあるって！」ラーンの瞳は輝いていた。彼はいつもそうだった。遺跡探索に没頭し、大穴を見つけるという夢に囚われていた。
テルヘルは二人が言い争いになるのをじっと見ていた。彼女の目的は遺跡の宝ではなく、ヴォルダンへの復讐だった。この遺跡にも何か、ヴォルダンを弱らせるヒントが隠されているのではないかと期待していた。
「よし、入ろう！」ラーンが扉を押し開けると、薄暗い通路が現れた。イシェは懐中電灯を点けて慎重に進むと、壁に奇妙な模様が刻まれていることに気が付いた。「これは…」
「何だ？」ラーンの視線がイシェの指さす場所に移動した。「確かに何か書かれてるけど…読めない」
テルヘルは壁の模様をじっと見つめた。「これは古代ヴォルダン語だ。私は少しだけ解読できる」彼女はゆっくりと読み始めた。「ここは…」
その時、通路の奥から不気味な音が聞こえてきた。それはまるで、何かの獣が唸り声を上げているような音だった。ラーンの顔色が変わった。イシェは剣を構えた。「何かいるぞ！」
テルヘルは冷静さを保ちながら言った。「恐らく遺跡の守護者だ。古代ヴォルダン語で書かれているように、この遺跡には…」彼女は言葉を続けようとしたその時、通路の奥から巨大な影がゆっくりと現れた。その姿は、獣とも人ともつかない不気味なもので、赤い目が二人をじっと見つめていた。
ラーンの顔は青ざめた。「これは…終焉か？」
イシェは恐怖で言葉を失った。テルヘルは静かに剣を抜いた。「私は決して諦めない」と彼女は言った。そして、獣の影に向かって歩み出した。