「おい、イシェ、どうだ？今日はいい感じの予感がするぜ！」ラーンが、目を輝かせながら遺跡の入り口に足を踏み入れた。イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら、後ろから続く。
「またそんなこと言って。あの日以来、何も見つかってないじゃないか」
「そう言っちゃダメだ！いつか必ず大穴を見つけるんだ！」ラーンの言葉はいつも通り、熱意に満ちていた。しかしイシェの心には、どこか不安が募っていた。彼らは最近、遺跡探しの依頼を受けることが減り、生活も苦しくなってきた。
「よし、今日はテルヘルさんの指示通りに、あの奥の部屋を目指そう」ラーンが地図を広げると、イシェは彼の肩越しに遺跡の中を眺めた。薄暗い通路には、苔むした壁と崩れかけた石像が立ち並び、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。
「テールの指示に従うのはいいけど、あの女性は一体何者なんだ？」イシェは呟いた。テルヘルは謎が多い人物だった。ヴォルダンとの復讐を誓うという口ぶりで、彼らに遺跡探索を依頼してきたのだ。
「その辺は気にすんな。金さえ払えばいいんだ！」ラーンはそう言って、先へ進んでいく。イシェはため息をつきながら彼を追いかけた。
遺跡の奥深くを進んでいくと、やがて大きな石門が現れた。その表面には、奇妙な模様が刻まれていた。「これは…」イシェは、見慣れない文字に目を奪われた。ラーンの興奮を抑えきれず、石門を押し開けようとしたその時、突然、背後から冷たい声が響き渡った。
「止まれ！」テルヘルが剣を抜き、彼らを睨みつけた。「あの部屋には入っちゃいけない」
ラーンとイシェは驚き、振り返った。テルヘルの顔色は悪く、何かを隠しているような気がした。
「なんで？」ラーンの問いかけに、テルヘルは沈黙したまま、石門の方へゆっくりと歩み寄っていった。
「あの部屋には…」彼女は言葉を濁しながら、石門の模様を指さし、「終わり」という言葉だけを残し、立ち去った。
イシェは不安な気持ちを抱きながら、ラーンの後をついて遺跡を後にした。二人は何も語らなかったが、心の中は混乱していた。テルヘルの言葉、そしてあの奇妙な模様は、彼らに何かを暗示しているようだった。
そして、彼らの前に広がる未来には、希望と絶望が入り混じり、終わりへと続く道が待ち受けている。