ラーンの大笑い声は、埃っぽい遺跡の奥深くまで響き渡った。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の手が触れた石壁をじっと見つめた。
「本当にここに何かあるのかね?」
「いや、絶対にあるって!ほら、この模様、なんか不気味じゃないか?」
ラーンは興奮気味に指さす。確かに壁には、幾何学的な模様が複雑に刻まれていた。イシェはため息をつきながら、自分の小さなランプの光を壁に当てた。
「ただの模様かもしれないわ」
その時、壁からかすかな音がした。まるで、何かが紡ぎ出されるような、微弱な振動だった。ラーンとイシェは同時に顔を上げた。
「あの音…?」
イシェは剣を握りしめ、ラーンの視線も鋭くなった。すると、壁の模様がゆっくりと輝き始め、やがて鮮やかな光を放った。その光は、まるで生きているかのように壁全体を包み込み、部屋中に奇妙な影を紡ぎ出した。
「これは…」
イシェの声を遮るように、壁の中央から石が一つ浮き上がり、ゆっくりと回転し始めた。石の表面には、複雑に絡み合った模様が刻まれており、それはまるで物語を紡ぐかのように、輝きを増していった。ラーンの瞳は、貪欲な光で輝いていた。
「大穴…だ!」
イシェはラーンの背後から、彼の手を掴んだ。「待ちなさい!これは何か違う… 」
しかし、ラーンの耳には届かなかった。彼は興奮のあまり、石に手を伸ばそうとした。その瞬間、石が激しく光り、部屋中に衝撃波が走った。ラーンは吹き飛ばされ、意識を失った。イシェは慌てて駆け寄り、彼を支えた。
「ラーン!大丈夫?!」
ラーンの顔は蒼白だった。イシェは彼の脈を確かめると、安堵のため息をついた。だが、その安堵は長くは続かなかった。部屋の奥から、何やら不気味な音が聞こえてきたのだ。それは、まるで何かがゆっくりと紡ぎ出されるかのような、低く重々しい音だった。
イシェは恐怖に震えながらも、立ち上がった。ラーンを背負い、遺跡の出口へと走り出した。後ろからは、不気味な音がどんどん大きくなっていった。