ビレーの tavern の喧騒を背に、ラーンはイシェに目を細めて言った。「今回はテルヘルが言うように、あの遺跡の奥深くまで行くんだ。噂じゃ、そこには…」
イシェはラーンの言葉を遮った。「また大穴の話か？ ラーン、何度も言ってるだろう。あの噂はただの作り話だ。それに、あの遺跡は危険すぎる。罠だらけだって聞いたぞ。」
「でもさ、もし本当だったら…？」ラーンの目は輝き始めた。「想像してみてよ、イシェ！山ほどのお宝！僕たちはもう貧乏とはおさらば！」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な性格にはいつも呆れていたが、彼の夢を打ち砕くのも忍びなかった。
「わかった、わかった。今回は君の言う通りにしよう。」イシェは小さく笑った。「でも、もし何かあったら、すぐに逃げ出すからね？」
ラーンは笑顔で頷き、テルヘルの方へ歩み寄った。彼女はいつものように冷たい表情で、地図を広げていた。
「準備はいいか？」テルヘルの声は硬く、どこか冷たかった。
「準備万端だ！」ラーンの声が tavern に響き渡る。イシェは彼を見つめ、小さく頷いた。
遺跡の入り口は暗い洞窟だった。薄っすらと光が差し込むだけで、中は深い影に包まれていた。ラーンは先頭に立ち、剣を構えて進んでいく。イシェはテルヘルに続いて慎重に歩を進めた。
遺跡の中は予想以上に広かった。壁には複雑な模様が刻まれており、床には石畳が敷き詰められていた。ところどころに崩れた柱や天井が見られ、かつて栄華を極めた文明の面影を感じさせた。
「ここが噂の奥深くに繋がる道だ。」テルヘルは地図を広げながら言った。
道は狭く、険しかった。足元には鋭い石が散らばっており、壁からは水が滴り落ちていた。ラーンは先頭を走り、イシェはテルヘルの指示に従って慎重に進む。
突然、床から青い光が立ち上った。ラーンの足元に広がるように光が渦巻き、奇妙な模様を描き始めた。
「何だこれは…」ラーンは目を丸くした。
イシェは声を張り上げた。「気をつけろ！罠だ！」
しかし、遅かった。光がラーンの体を包み込み、彼を地面に叩き落とした。
イシェはラーンに駆け寄った。「ラーン！」
彼は意識を失っていた。青い光は消え、遺跡は再び静寂に包まれた。テルヘルは冷静に状況を判断した。
「何かの魔法だ。ラーンを安全な場所に連れて行こう。」
イシェはラーンの体を抱き上げ、テルヘルの指示に従い、遺跡から後退し始めた。
その時、イシェは何かを感じた。遺跡の奥深くに、まるで宝石のように輝き放つものが見えた。それは、彼らが探す「大穴」だったのか？ それとも、全く異なる何かだったのか？
イシェは一瞬ためらったが、ラーンのために、そして自分自身の好奇心のために、再び遺跡へと足を踏み入れた。