ラーンの重い剣の音が、薄暗い遺跡の通路に響き渡った。イシェは眉をひそめて彼を見る。「また無駄な動きだな。あの石像には何の意味もないだろう。」ラーンは肩をすくめた。「いや、見てみろよ！この石像の持ち物だって、剣の形をしているんだぞ！きっと何か秘密があるに違いない！」彼は興奮気味に石像の手に触れたが、その瞬間、石像の腕が崩れ落ちた。埃が舞い上がり、ラーンの顔には落胆の色が浮かんだ。「あ…」
イシェはため息をつきながら、崩れた石像の周りをくまなく調べ始めた。すると、石像の下から小さな金属製の箱が見つかった。「ほら、やっぱり何かあったじゃないか。」イシェは少し得意げに言った。ラーンも顔を輝かせた。「よし！開けてみよう！」
テルヘルがその場を静かに見つめていた。彼女の視線は、石像の腕ではなく、崩れた際に露出した壁に向けられていた。そこには、複雑な模様が刻まれており、まるで何かを伝えようとしているようだった。彼女は自分の指でそっと模様をなぞりながら、過去の記憶を思い起こす。かつてヴォルダンで、同様の模様を目にしたことがあったのだ。
「何だ、あの模様は？」ラーンの問いかけに、テルヘルは冷静に答えた。「ただの装飾ではない。これは古代文明の文字だ。もしかしたら、この遺跡には、ヴォルダンが隠した秘密が眠っているのかもしれない。」
ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らはいつも、遺跡から財宝を掘り当てることを夢見ていた。だが、テルヘルの言葉に、それ以上の何かを感じた。それは、単なる冒険ではなく、自分たちが巻き込まれるかもしれない大きな物語の始まりだった。そして、その物語の鍵となるのは、彼らの目の前にあるこの遺跡なのかもしれない。
イシェは小さな箱を手に取り、慎重に開け始めた。その中に納められていたのは、古い巻物だった。イシェが巻物を広げると、そこに記されていたのは、まるで素振りのように、意味深な文字列だった。ラーンの胸が高鳴った。「これは…！」