ラーンの大げさな雄叫びがビレーの朝静けさを切り裂いた。「今日は必ず大穴だ！イシェ、お前も信じろ！」彼の目は輝き、錆びついた剣を手に興奮気味に振る。イシェはため息をつきながら、小さな革袋からパンを取り出した。「いつも大穴だと言うけど、結局のところただの石ころと腐った骨ばかりじゃないか」。ラーンの肩を軽く叩きながら、冷静に続けた。「それに、テルヘルがくれたあの地図には、遺跡の奥深くにある部屋の記述があるはず。急いで深部へ入る前に、まずは周辺をくまなく探すべきだ」。
テルヘルは影のように二人を後ろから見つめていた。鋭い視線は、まるで二人の動きを計算しているかのようだった。「時間がない」と彼女は低い声で言った。「ヴォルダンに追われている身だ。遺跡の奥深くにある遺物が必要なのだ」。彼女の言葉には力強さがあり、ラーンもイシェも反論する気力を失った。
遺跡の入り口は崩れかけていて、苔むした石段が長く伸びている。ラーンが先頭を切って入ると、イシェが慎重に足元を確認しながら続いた。テルヘルは二人から少し遅れて、常に周囲を警戒しながら歩いていた。遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には奇妙な模様が刻まれており、時折不気味な音が響いていた。
「ここだな」ラーンが興奮した声で言った。地図に記された部屋の入り口があった。イシェは少し不安そうに振り返り、「本当にここに何かあるのか？」と呟いた。「誰にも見られたくないものが見つかるかもしれない。この遺跡には危険な罠があるかもしれない」。
テルヘルは冷静に言った。「罠を避ける方法を知っている。心配するな」。彼女は小さな袋から粉末状のものを取り出し、入り口の床にまいた。すると、床の一部が光り始め、複雑な模様が現れた。
「これは？」イシェは驚いて言った。「古代の魔法だ」テルヘルは説明した。「この遺跡の守り神を鎮めるために必要だった」。彼女は深呼吸をして、部屋へと足を踏み入れた。ラーンとイシェも彼女の後に続いた。部屋の中央には、石棺が置かれていた。その上には、輝く宝石が埋め込まれた王冠があった。
「大穴だ！」ラーンの叫びが再び響き渡った。しかし、イシェは何かを察知したように、不安な表情でテルヘルを見つめていた。彼女の瞳には、冷酷さと狂気が宿っていた。