「よし、今回はあの洞窟だな!」ラーンが地図を広げ、興奮気味に言った。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を見る。「またあの辺り? 危険だって聞いたぞ。それに遺跡の記録には何も出てないじゃないか」
「記録がないからこそ面白いだろ! 大穴が見つかる可能性もあるんだぜ!」ラーンは目を輝かせ、イシェの言葉は耳に入っていないようだった。テルヘルは静かに二人のやり取りを見つめていた。彼女の目的は遺跡の遺物ではなく、ヴォルダンに復讐するための情報だ。この遺跡探検は、その情報を得るための手段の一つに過ぎなかった。
洞窟の入り口は狭く、湿った風が吹きつけてきた。「ここはいつもと違うぞ…」イシェが呟くと、ラーンは不快な表情を浮かべた。「何かあったのか?」テルヘルが鋭い目で周囲を見回した。すると、洞窟奥深くからかすかな光が漏れてきた。「あれだ!」ラーンは興奮気味に走り出した。イシェはため息をつきながら、テルヘルの後についていった。
光が強くなるにつれて、その正体がわかった。それは巨大な水晶だった。水晶の表面には複雑な模様が刻まれており、かすかに光を放っている。「なんて美しい…」イシェは目を丸くした。ラーンは水晶に手を伸ばそうとした瞬間、床が崩れ始め、三人は深い闇の中に吸い込まれていった。
目が覚めると、彼らは広大な地下空間の中にいた。天井から巨大な水晶のシャンデリアが吊り下がっている。そこには、かつて栄華を極めた文明の遺跡が広がっていた。「ここは…」イシェは言葉を失った。ラーンは興奮を抑えきれない様子で、水晶に手を伸ばそうとした。「待て!」テルヘルが叫んだ。「あの水晶に触れるのは危険だぞ!」
その時、水晶から光が放たれ、空中に巨大な影が現れた。それは、かつてこの文明を滅ぼしたという伝説の獣の姿だった。「これは…」テルヘルは息を呑んだ。伝説は本当だったのだ。三人は絶望的な状況に立たされていた。紙一重の差で、彼らは死を免れることができるのか?